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ドキュメント・ザ・舞台裏/デイケア「きらり」を突撃レポート!(2018/10)
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デイケア「きらり」のリアルな裏側をお見せします!
当病院の舞台裏を潜入レポートする本企画。
今回は特集記事に登場したデイケア「きらり」のリアルな現場をご紹介したいと思います。
今回のナビゲーターは入職5年目のヤングガール中川さんと、同2年目のヤンゲストボーイ森本さん。いずれも今後を嘱望される作業療法士だ。
ホールで出迎えてくださったお二人にカメラを向けると、即座にピースサインで決めたり流行歌のようなポーズを取ったりしてくださったのだけれど、あー、サービス精神は嬉しいけど、こういうの困るんですよねえ。内輪ウケっぽくて誌面に使いにくいし……。
という筆者の引きつった笑顔を察したお二人、すぐさま神妙な直立不動で写真におさまってくださりホッと胸をなでおろす。その場の雰囲気を読んで臨機応変な対応を取れる、とても優秀なスタッフさん達である。
オシャレな「にんちき」
さっそく、「きらり」の現場について伺う。
利用者の方々は、ここでどんな風に過ごされるんですか?
中川 「朝、ホールのテーブル席にそれぞれ自由に座られて、朝の会があって、その後フリータイムや各種プログラムがあります」
森本 「席は自由ですけど、定位置が自然と決まってきますね。対人関係の練習のために、あえて席を転々とされる方もいますよ」
プログラムについて教えてください。
中川 「発達障害圏講座やコミュニケーション講座など、いろいろあります。私が担当しているひとつに『にんちき』があります」
「にんちき」って何ですか?
中川 「認知機能の略で、脳の仕組みを学びながら、注意力や記憶力、問題解決能力などの維持と向上を目指すプログラムです」
講座で実際に使っている教材を持ってきてくださった。きれいな手書きの文字で分かりやすくまとめられている。
「にんちき」ではさらに、日常生活での困りごとにどう対処すればよいかなど、実践的な内容についても学べるという。
力作揃いのクラフト
「僕が中川さんと一緒に担当しているプログラム、『クラフト』の作品も見てもらえますか?」
こうおっしゃる森本さんについていくと、そこには財布やキーホルダーといった革細工、その他さまざまな工芸品が並べられていた。
森本 「皆さんと一緒に作ってるんですけど、とても上手に作る方が多くて驚きます」
中川 「この小物も力作なので見てください。あ、これも是非撮ってください!」
どれも丁寧に手作りされていて、たしかにこのまま販売できそうな力作揃いだ。そして中川さん森本さんともに、ご自身が担当している患者さんの作品を大プッシュされていて、気持ちはよく分かるのだけれど、全て撮影・掲載するわけにいかないのが筆者の立場的につらいところ。
寝起き感満点の休憩コーナー
案内されていて気になる場所があった。手書きで「休憩スペース」と記された薄暗い一角、ちょっとアヤシイ雰囲気である。
こんな筆者の興味津々を察したのか森本さん、「どうぞこちらへ」と休憩スペースの内部に踏み込むやいなや、「こんな風に寝るんです!」とその場で実演してくださった。
森本 「睡眠リズムがまだ不規則で寝不足のまま来られた人には、ここで仮眠を取っていただいています」
中川 「あと退院直後でまだ刺激がしんどい人なども、ここで休んでもらったりしているんです」
まだ調子が整わない人たちへの配慮として、このスペースが設けられているのだ。
「僕の寝姿、ちょっとムーディーすぎました?」と気にする森本さんだったが、ええと、寝起きの人そのものだったので、全くもって大丈夫です(笑)。
鬼気迫らぬピラティス!
森本さんの寝起き姿に筆者もすっかり脱力して頭がぼんやりしてきたので、ここらへんでひとつ、ほとばしるヤングパワーを拝見したいところだ。
シャキッと活発なやつがあればお願いできますか?
するとお二人、棚からヨガマットとヨガポールを取り出し、床にセットして実演してくださった。
森本 「身体を動かす系のプログラムとしては、このピラティスがあります」
中川「こんな感じですかねえ。講師の先生に来てもらって、みんなでやっています」
ほとばしるヤングパワーと言うには無理のある気抜け加減だけれど、考えてみれば熱血スタッフに鬼気迫るピラティスを披露されたところで迷惑な話で、このくらいのポンヤカした感じがちょうどいいのだろう。
……と自分を納得させていたのも伝わったのか、ヨガマットの前で立ち尽くす筆者に中川さんが声をかけてくださった。
「シャキッと新鮮な野菜なら、あります!」
本当にフレッシュな野菜(の写真)
こうして案内されたのは外にある園芸コーナー、ではなくパソコンのディスプレイだった。
「ものづくりプログラムで皆さんと作った野菜です。実はすでに収穫して料理に使ってしまったので、これは先月撮った写真なんですけど」
現物を拝見できないのは残念ながら、写真で見ても張りと色艶がよくてフレッシュさが伝わってくる。これで作った料理もいただきたかったなァ~。
ものづくりプログラムってなんだか楽しそうですがどういうものなんですか?
中川 「園芸では水やりなどの役割を担う練習、調理ではみんなと協力して作業する練習といった意義があります」
森本 「そうやって世話したら実を結ぶ、そして調理したら美味しい料理ができるという達成感もありますし」
ただ美味しいものを食べるだけでなく、そのプロセスが役割分担や協力作業の練習になり、努力が結果につながるという達成感にもつながるのだ。まさに一石二鳥!
各種ゲームとサークル活動
ふと傍らの棚をみると、将棋やオセロ、さまざまなボードゲームなどが置かれていて、こちらのほうも楽しそうで気になるところだ。
これらは何に使うんですか?
中川さんは患者さんが作ったという素敵な帽子(アクリルたわし)を頭にのせられながら答えてくださった。
「サークル活動の枠で行っているボードゲームもありますし、お昼休み時間は皆さん、好きな方は将棋など指しておられますね」
サークル活動というのは誰でも立ち上げを申請できて、承認されれば、決められた期限と予算で活動を行うというもの。過去には他にも、紅茶サークル、カラオケサークルなど多くの活動があったそうだ。
患者さん達が自ら興味関心を広げ、楽しみながらグループ運営を経験することを目的としているという。
お仕事への思い
さいごに、お二人にうかがった。
デイケアの作業療法士になろうと思われたきっかけについて聞かせてください。
中川 「学生時代は作業療法士ではなく、一般企業への就職を考えていたんですが、実習先のデイケアで皆さんがとても温かく良くしてくださって、この道に進むことに決めました」
森本 「僕は足をケガしたときお世話になった理学療法士さんの影響が大きいですね。実はポーチやアップリケなど小物を作るのが好きで(笑)、それで作業療法士を選んだのもあります」
プライベートの趣味について訊くと、森本さんは最近アコースティックギターを始めて、音楽教室に通っているとのこと。中川さんはホットヨガを始めて、1年ほど通い続けているという。
きちんと基礎から学び、それを楽しみながら継続する。趣味にも仕事にも通ずるこれらの姿勢が印象的なお二人だ。
宇治おうばく病院を担うヤングパワーで、「きらり」をさらにボンヤカと活気づけていってください!
(取材・原稿)臨床心理士・名倉
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