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特集/京都駅前メンタルクリニックとバックアップセンターが新体制に!(2024/08)
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2つの施設が辿ってきた変遷
栄仁会の「職場復帰支援」を担う2つの施設「京都駅前メンタルクリニック」と「バックアップセンター・きょうと」がこの4月から新体制に。そこで、歴史を知る3人のスタッフにお話を伺いました。
Q.栄仁会の「京都駅前メンタルクリニック」(以下、「駅メン」と略)と、そこに併設された復職トレーニング専門デイケア施設「バックアップセンター・きょうと」(以下、「BUC」と略)が、さる4月、各所長が交代し、スタッフも一部入れ替わるなどして新体制を迎えました。まず、そこに至るまでの変遷を振り返っていただければと思います。
露木 駅メンの前身は、「烏丸診療所」という施設です。これは、宇治おうばく病院に入院されていた患者さんが退院後、フォローのために通院してもらう施設という位置づけでした。それが、2006年に「京都駅前メンタルクリニック」と名称を変えました。烏丸診療所の時代より、心療内科的な色合いを強めての再出発でした。
その後、2011年に駅メンは現在の場所に移転しますが、そのときに「BUC」が同じフロアに併設されたのです。以後、2つの施設で力を合わせての職場復帰支援に力を入れていくようになりました。
Q.BUCは、うつ病などで仕事を休職中の方を対象に、復職(リワーク)デイケアを行っていると聞きました。この分野では関西有数の歴史を持つそうですね。
藤井 ええ。2006年に開設されましたが、それ以前には「リワーク」ということを謳った医療施設は関西にはありませんでした。「メディカルケア虎ノ門」(東京)ではリワークが始まっていましたが、関西ではうちが最初だと思います。
Q.両施設が現在の場所に移転した2011年から駅メンの所長をされていたのが露木先生ですね。
露木 はい。この4月に竹田先生に所長をバトンタッチしましたが、それまで13年間務めさせていただきました。
Q.13年の間に、どのような変化がありましたか?
露木 当初はうつ病や双極性障害の患者さんが中心でしたが、最近は発達障害の方が増えてきたという傾向がありますね。その間、発達障害のことがだんだん世に知られるようになってきたからだと思います。今後は、発達障害で就労が困難な方の支援にも力をいれていきたいと考えています。すでに発達障害の方の心理検査を実施できる体制も、当施設には整っています。あとは、企業側の人たち(人事部など)も、13年前に比べてリワークに対する意識が高まってきて、協力してもらいやすくなりましたね。
職場との連携を重視するクリニック
Q.歴史の長さ以外で、駅メンの特色として、どんなことが挙げられますか?
露木 駅メンでは、職場復帰支援の体制を整えています。産業医、職場の健康管理室や人事担当の方から相談を受けることも多くあります。相談をもとにご本人様の治療を行い、必要に応じてBUCを勧めます。BUCを利用しない場合でも、ご本人様、職場の関係者の方にお越しいただき、復帰に向けた面談を実施することも多くありますね。
竹田 年間30から40件ほど職場の方と面談を行っています。これは他のクリニックではなかなかないサポート体制だと思います。
日本に13しかない認定リワーク施設の1つ
Q.BUCの復職デイケアの質の高さを示す客観的データとしては、どんなことが挙げられますか?
藤井 一般社団法人「日本うつ病リワーク協会」から、「リワーク施設認定」を受けています。リワークを行っている医療機関は日本に200施設ほどあるんですが、その中で「リワーク施設認定」を受けているのは、うちも含めて13施設のみです。(注:2024年4月現在)
Q.その認定は、どのようにして受けるものなんですか?
藤井 リワーク協会の「施設認定委員」という専門の方が来られて、審査されます。
竹田 リワークに必要なプログラムが網羅されているか、きちんと実施されているか、今年は何人の通所者がいて、そのうち何人が復職されたのか……たとえばそういうことを、すごく綿密に調査されます。
藤井 5年に1回、認定を受け直す必要があります。認定がある年は、我々スタッフの側の準備が大変なんです。
竹田 そうですね。まず認定説明会に参加して、次に書類審査があって、それに受かると訪問審査を受けます。審査結果にも中間報告と最終結果報告があって、けっこう大がかりなんです。認定がおりるまでに全部で半年かかりますし……。
医療機関が実施する「医療リワーク」の強み
Q.露木先生、竹田先生は、精神科医としてリワークに関わってこられたお立場から、そうした強みについてどうお感じですか?
竹田 私は、所長になる前から、駅メンでの診察に携わってきました。その経験から感じていることですが、月1回程度の診察だけでは見えなかった患者さんの実像が継続的に関わることで見えてきたという経験が、たくさんあります。
たとえば、ある患者さんについて、うつ病だと思っていたのが、リワーク・プログラムをする中で実は躁うつ病だということがわかって、お薬の調整がうまくいったというケースがありました。その方は回復され、無事に復職されています。
Q.うつ病と躁うつ病の区別というのは、専門家から見ても難しい面があるものなのですか?
竹田 そうですね。躁うつ病でもうつの時期が多めのケースだと、診察時にそちらの面しか見えなくて誤認しがちだということはあります。「おかしいな。うつ病の薬がどうして効かないのだろう?」と首をかしげる時期を経て、やっと躁うつ病だと気付いたり……。
露木 通院での診察だけだと関わりが「点」であるのに対して、リワークでは「線」や「面」での関わりになるみたいなところがありますね。自分だけではなく、BUCのスタッフから見た姿も伝わってきますし……。リワーク・プログラムの長い期間で丁寧に接していくと、深い関わりが生まれますから。
藤井 そのあたりはBUCのスタッフもかなり意識しています。最近は、医療機関以外にもリワークを行う施設が増えてきました。しかし、BUCは医療機関で実施しているリワークで、スタッフは医療の専門家です。メンタルの疾患で休職された方には、正確な診断と治療が必要不可欠で、BUCで行うリワークは治療そのものなんです。医療スタッフが日々の観察の中で患者さまの変化に気づき、それを先生に報告して診断につなげていただくことが、非常に大事になります。
精神科クリニックと復職支援施設が併設する強み
Q.新体制発足に当たって掲げられた、新たなコンセプト(スローガン)に込めた思いを伺えますでしょうか?
竹田 昨年に新体制発足が決まってから、スタッフ全員が話し合いを重ね、「一緒に考えよう、これからのこと」という新しいコンセプトを決めました。
露木 誰か1人で決めたのではなく、全員で決めたことに意義があると思います。それぞれが考えてきたいくつかのコンセプトの中の言葉を組み合わせて、最終的にこの言葉にまとまりました。全員の気持ちが込められているのです。
竹田 一見さりげない言葉で、シンプルなコンセプトのようですが、いろんな意味が込められています。たとえば、「一緒に」とは、スタッフと利用者さんが一緒に復職を考えようということでもあり、駅メンとBUCが一体となって頑張っていこうという意味でもあります。また、「今後は、産業医や企業の人事担当者との連携や、宇治おうばく病院との連携もさらに密にしていこう」という意味を込めた「一緒に」でもあります。
Q.やはり、駅メンとBUCが同じフロアに併設されていることと、宇治おうばく病院と緊密な連携ができることは、大きな強みになっていますね。
露木 そうですね。たとえば、おうばく病院に入院、もしくは通院されていた方が、症状がよくなって復職を目指そうということになって、こちらに通所されるケースがあります。その場合、連携が密である分、その人に合ったプログラムが組みやすいのです。
竹田 逆に、BUCの利用者さんの入院が必要な状態になった場合にも、おうばく病院とすぐに連携できます。いずれのケースでも、メンタルクリニックやリワーク・デイケア施設が単独でやっているところは、うちの場合ほどスムースにはいかないでしょう。
藤井 BUCの利用者さんの調子が悪くなったとき、同じフロアにいる駅メンのドクターにすぐ相談できること自体、私たちスタッフにとってはすごくありがたいです。すぐ先生に診ていただけて、しっかり治療を行えますから。
ニーズにいっそう応えられる体制を
Q.他の強みを挙げるとすれば?
露木 駅メン、BUCとも、スタッフがみんな研究熱心なところでしょうか。熱心さを示す一例として、リワーク協会の年次大会では、ほぼ毎年、BUCのスタッフが発表を行っています。
藤井 そうですね。たとえば、リワーク・プログラムについて、詳細や効果をまとめて、論文やポスター発表(研究概要をまとめた大きなポスターの前で行う発表)をしています。今年の4月も発表を行いました。
竹田 今年からは、我々ドクターもいろんな学会などで積極的に論文発表を行っていきたいと思っています。
Q.新体制になってから変わった点として、他にどんなことが挙げられますか?
竹田 当クリニックのホームページ上で診察予約や問診ができる「ウェブ問診」「ウェブ予約」を、新たに取り入れます。利用者の負担をできるだけ軽くして、診察をお待たせする時間もなるべく短くするための改善です。
露木 「ウェブ予約」はほんの一例ですが、世間の時代的ニーズに応えられる体制を、今後いっそう整えていきたいと思います。
ありがとうございました。
(取材・原稿)前原政之
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