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カウンセリングは「話を聴くだけ」ではない
Q.一般科一般の人々には、そもそも「カウンセラーと精神科医の違い」がよくわかっていない面があるように思います。
片桐 そうかもしれませんね。まず、カウンセラーは医師ではありません。私どもは「臨床心理士」という資格を持っていますが、医師ではないので、薬の処方や病気の診断はできません。医師は精神医学を基本としているのに対し、カウンセラーは心理学を基本としていて、心理療法や心理テストを主に行います。
伊東 それと、診療時間にも大きな違いがありますね。カウンセリングはクライエント(来談者=カウンセリングを受ける側)から話を聴く時間が長いのに対して、精神科医はどうしても診療時間が短くなります。
Q.その「話を聴く」ということについても、カウンセリングに対する偏見が世間にはありますね。つまり、「カウンセラーが話を聴くだけなのに、高いお金を取られる」というような……。
片桐 カウンセリング料が高いか安いかは、料金を見てご判断いただくしかありません(記事末尾に料金等を紹介)。ただ、「カウンセラーはただ話を聴くだけ」というイメージには異を唱えたいですね。そもそも、素人が話を聴くのと、私たちプロのカウンセラーによる「傾聴」は、全然質が違うと思います。
伊東 私たち臨床心理士は、話をじっくりと聴いたうえで、クライエントに対していろんな提案や介入を行います。「ただ聴くだけ」ではないのです。医師が治療のために使う最大の武器が薬だとしたら、カウンセラーとっては言葉こそが最大の武器です。対話を通じて、クライエントが抱える心の問題の解決・解消につなげていくことが、我々の役割です。
Q.カウンセラーは薬を使わない。にもかかわらず、カウンセリングを受けることによって心の問題が解決していくというのは、どうしてなのでしょう?
伊東 カウンセリングを通じて、クライエントのものの見方・考え方が変わることで、バランスの取れた見方や対処行動ができるようになるからです。
たとえば、人の悩みの多くは対人関係をめぐるものです。夫婦関係の悩み、嫁姑関係の悩み、子育ての悩み、職場の人間関係の悩みなど……。そうした悩みは、コミュニケーションの質自体が変わらないと解決に向かいません。だからこそ、そこに変化を起こしていくためには、カウンセリングのときの対話と、こちらからの何らかの介入提案を通して、コミュニケーションに変化を起こしていくのです。心理療法の中でも、「家族療法」や「短期療法(ブリーフ・セラピー)」、「対人関係療法」などは、対人関係の問題に強いと言われています。
Q.「認知行動療法」とか「精神分析療法」とか、いろんな心理療法があるのですね。
片桐 ええ。そして重要なことは、それぞれの心理療法に、実証研究の積み重ねによるエビデンス(科学的根拠)があるということです。たとえば、認知行動療法や対人関係療法は、うつ病の症状改善に対して薬並みの効き目があるとか、再発予防に関してはむしろ薬以上に効き目があるとか、そういうデータがあります。
カウンセリングは家族が受けてもよい
Q.心の問題が軽いうちはカウンセリングで済むけれど重くなってしまうと精神科の治療が必要になる……そんなイメージを持っているのですが、これは正しいですか?
片桐 おおむね合っていますね。カウンセラーが、「このクライエントは不眠や抑うつ感などの症状が強く、薬物療法の必要性など医師の判断を仰いだ方がいいと感じた場合、精神科医の受診につなぐこともよくあります。
伊東 ただ、その線引きに沿わない例もあります。たとえば、明らかに重い精神疾患であっても、本人に病識(自分が病気であるという意識)がなければ病院に来たがらないことも多いでしょう。その場合、精神科の治療は本人が受診しないと始まりませんが、カウンセリングならまずは家族が本人に代わって受けるということが可能ですから、最初の入り口としてカウンセリングが用いられる場合があるのです。
Q.精神科の場合、「本人が来ないとダメだ」という決まりがあるんですか?
片桐 本人がすでに受診しているけど、家を出られない状態などのときに代わりに家族が薬をもらいにこられることはあります。ただ、本人が一度も受診しないまま、家族の話だけで診断を下して、薬を処方することはできないですね。
伊東 カウンセリングはそのへんがわりと「ゆるい」というか、「本人が病院に来られなくてもどうにかなる」という点が大きな強みなのです。たとえばひきこもりなど、本人が一歩も家から出られないという場合でも、家族にカウンセリングを重ねることで問題が解決に向けて動き出す場合があります。また、夫によるDVに悩んでいる妻がカウンセリングを受ける例もあれば、心の問題を抱えた部下のために上司が受ける例もあります。いずれの場合も、カウンセリングで問題が解決に向かう例は少なくありません。
Q.家族がカウンセリングを受けることによって、本人が変わっていった例を教えてください。
伊東 ひきこもりの息子の家庭内暴力に悩んだ両親が息子に代わってカウンセリングを受け、そのことを通じてだんだん家庭内暴力が収まっていった、という例があります。つまり、親の側がコミュニケーションのやり方を変えられるように、我々カウンセラーが介入をしていった結果です。そうした例の中には、息子さんが落ち着いてから、「これまでの自分の行動を振り返りたいから」と言って、自ら進んでカウンセリングの場にやってくるケースもあります。家族へのカウンセリングというステップを踏むことによって、けっきょくは本人がカウンセリングを受けたケースです。
片桐 そもそも、親が「子どもの悩みを解決するためにカウンセリングを受けよう」とすること自体、大きな変化なんですよね。外に「勇気の一歩」を踏み出して専門家の助けを求めたということですから。子どもに「親が自分のことで真剣に悩んでくれている」というメッセージを伝えることにもなりますし……。
カウンセリングの「いいとこ取り」ができる体制
Q.栄仁会という医療法人の中にカウンセリング部門があることの強みはどういうことですか?
伊東 カウンセラーしかいない開業カウンセリングの場合、医療が必要になるケースでは、他機関との連携という点で弱みがあると思うんです。逆に、医療機関内にカウンセラーが勤務してカウンセリングを行う場合、医療行為の枠内でしかカウンセリングが行えません。つまり、そこにやってくるのは精神疾患の病名がついた患者さんだけで、症状の軽いクライエントのカウンセリングには応じにくいでしょう。
その点、栄仁会の場合、宇治おうばく病院とは別施設としてカウンセリング部門がありますから、いま言った二つの「いいとこ取り」ができます。医療で扱わない人生相談的なカウンセリングもできるし、医療が必要な場合の精神科医との連携も、スムースかつ迅速に行えるのです。
片桐 同じ栄仁会で働く精神科医なら、私たち(臨床心理士)とも気心の知れた同士である、という点が強みですね。元々信頼関係があるし、なんでも相談できますから……。他機関の医師と連携する場合、なかなかそうはいかないと思うんです。そして、精神科医と臨床心理士の間にきちんと信頼関係があることは、患者さんにとっても大きなプラスになります。統一した治療方針も決めやすいですし。
Q.ところで、あらゆる病気は早期発見・治療が大切なように、カウンセリングも「なるべく問題がこじれないうち」に受けることが大切なのだと思いますが…。
片桐 そうですね。たとえばうつ病にしても、「ちょっとしんどいな」くらいの段階で来談してくれていたら、仕事を休職することもなかったかもしれないし、回復ももっと早かっただろう、と思えるケースが多いです。でも実際は、とことんしんどくなって、「もうどうしようもない」という段階になって初めて来られる方が多いのです。
伊東 人間は、変わろうとするためには勇気が必要です。我々カウンセラーは、変わるために「ああしろ、こうしろ」と強制するわけではなく、クライエントとよく話し合って、「その人が変わるための最善の道」を一緒に探す役割です。そのためにじっくりと対話していくからこそ、カウンセリングには時間がかかるのです。そしてそのうえで、変わるために背中を押してあげる。カウンセリングというのはそういうものですから、不安がらずに気軽に来ていただきたいと思います。
片桐 あと、当センターの強みとしては、臨床心理士の数が多くて、しかもいろんな流派・タイプの人がいるので、多様なニーズに応えやすいということがあります。
伊東 各カウンセラーのプロフィールをホームページに載せていますから、予約を取られる前にそれを見ていただくといいかもしれませんね。
片桐 あれを見て、臨床心理士を指名して来られる方もいますね(笑)。「◯◯さんでお願いします」と…。
Q.カウンセラーの「指名」ができるんですか?
片桐 ええ。お悩みの内容や希望される技法、カウンセラーの性別などを考慮して、初回ご予約の際にカウンセラーを指名してくださるケースも増えています。ホームページのプロフィール欄も是非ご活用いただければと思います。
(取材・原稿)前原政之
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