べるぶネオ
ドキュメント・ザ・舞台裏/栄養管理室のリアルな裏側をお見せします!(2017/2)
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栄養管理室のリアルな裏側をお見せします!
当病院の舞台裏を潜入レポートする本企画。
今回は当病院で供される食事の管理を一手に担う栄養管理室にお邪魔しました。
栄養士さんって普段、なにをしているんだろう?
もちろん病院食の献立を考えてらっしゃるイメージはあるけれど、それ以外のお仕事がいまひとつ想像できない。
一日三食の献立を考えるだけだったら、30分もあれば済んでしまいそうである。でも何人もの栄養士さんが始終忙しそうに働いているお姿を見ると、きっとそれだけではないはずだ。
そこで今回は管理栄養士さんに突撃取材して、そのお仕事っぷりを紹介してみたい。
意を決して栄養管理室に
この日ご出勤の管理栄養士さんたち。
普段なかなか足を踏み入れる機会のない栄養管理室。
おそるおそるノックして扉を開けてみると……それまで和気あいあいと話していた4人の女性栄養士さんの空気が一瞬固まった。
あまりのアウェイ感にそのままUターンしたくなる足を踏みとどめながら、声をしぼり出す。
「あ、あのう、べるぶネオの取材なんですけど、大丈夫ですかねえ?」
すると主任の福島さんが表情をゆるめて「どうぞ、どうぞ」と声をかけてくださり、続いて皆さんの表情にも少しずつ笑顔が戻ってきた。とりあえず胸をなでおろしつつ、室内を撮影させていただきながら取材をスタートした。
今回はベテランの主任・福島さん、スラリと気鋭の久米さん、お二人の管理栄養士さんが取材に応じてくださることに。
日常業務 ~ 献立編
Q.さっそくですが、栄養士さんって普段、どんな業務をしてらっしゃるんですか?
福島 「大きく分けると3種類かな。まず、病院食の献立を考えること。あと、患者さんの栄養管理&指導。そして、電子カルテのオーダーチェック。主にこの3つを分担して回してるねん」
気さくな栄養士さんでヨカッタ。この調子であれば何でも訊けそうである。
Q.まず、病院食の献立ってどんな風に組んでいるのか教えてください。三食だけならすぐに考えられそうな気もするんですが……。
福島「いやー、それが結構タイヘンなんよ。この献立予定表、ちょっと見てもらえるかな」
拝見すると、ビッシリと書き込まれた予定表が何枚も積まれている。これが一食分の献立だというからびっくりだ。
Q.一食分なのにどうしてこんな枚数になるんですか?
久米 「一食あたり43通りのバリエーションがあり得るんですよ」
ええーっ、どういうこと!?
福島 「まず横軸のメニューバリエーションとして、一般食以外に貧血食、塩分調整食、脂質調整食……って具合に9種類あって。で、縦軸の形態バリエーションとして、普通菜以外に軟菜、きざみ菜、ゼリー食、流動食……って具合に13種類あって。存在しない組み合わせもあるけど、多くなるのは分かるやろ?」
患者さんの状態に応じてこれだけの組み合わせがあるのだ。さらに食材の出庫や在庫管理などを行う給食帳票作りの業務もあって、これらが重なると多忙を極めるという。
日常業務 ~ 栄養管理&指導編
Q.では次の業務、患者さんの栄養管理と指導について教えてください。
福島 「入院患者さん全員の血中アルブミン値や体重、喫食量といった栄養状態をスクリーニングしたうえで、リスクのある方々はチェックして、より個人に合った食事メニューを提案させていただいてるんよ」
久米 「入院されたときと経過、退院されるときの数値を評価して、患者さんの栄養状態を比較するようにもしてます」
なるほど、それぞれの患者さんに適した食事メニューを栄養士さん側からも提案しているのだ。
患者さんへの指導もされるんですか?
福島 「退院後も患者さんに健康的な食生活を送っていただくために、個人指導したり、作業療法士さんと共同で教室を開かせてもらったりしてるよ」
久米 「こんな魚の切り身やバナナのマグネットも使いながら(笑)」
福島 「高齢の患者さんやそのご家族さんには、食べやすいようトロミを付ける補助食品の説明をしたりもしてる。こんな感じでね」
久米さんが「ダイエットの指導もしています」とおっしゃると、福島さんは「そうそう♪」と言いながら、机の中からコーラやらどら焼きやらカップ焼きそばやらを抱えて持ってきてくださった。
Q.主任さんのおやつですか??
福島 「違うってば! これはジュースやお菓子、カップ麺にどれだけの糖分が入ってるかを患者さんに知ってもらうための教材! キョ・ウ・ザ・イ!!」
「でも両手にお菓子持ってる人って、ほんと食いしん坊に見えますよね……」と冷静に分析する久米さんを横目に福島さんいわく
「ダイエット指導は彼女たちに担当してもらってるねん。私がダイエット云々言っても、ちっとも説得力ないからね(笑)」
いえ、決してそんなことは……。
日常業務 ~ 電子カルテその他
Q.あとはどんなお仕事があるんですか?
福島 「冒頭に言った電子カルテチェックがあって、これは患者さん全員の食事オーダーをチェックして、間違えないよう調理場に伝えていく作業。あとは細々いろいろと、たとえば病院食を出すときに使う食器の選定とかもあるね」
同じ献立であっても、お皿の彩りひとつで風味の引き立ちかたが変わってくるという。
どんな食器を使うかも栄養士さんが頭を悩ませるところなのだ。
また、病棟にはさまざまな患者さんがいらっしゃるので、安定して食べていただけるかどうかもポイントなんだそう。器の裏面まで入念にチェックされる姿は、さながら茶人か骨董商のようである。
仕事で苦労すること
Q.お仕事のうえでのご苦労も多いのではないでしょうか?
福島 「こちらの思いが厨房の現場にうまく伝わらないときがいちばん苦労するかなあ」
Q.たとえばどんなことですか?
福島 「煮物でも火加減が浅いと具材が硬いままやし、逆に煮過ぎると煮崩れするし、同じレシピでも作り手によって味が大きく違ってくるんよ」
久米「現場の調理師さんが、食べる人の立場にたって作ってくださったときは私たちも嬉しいですし、そうでないときは悲しい気持ちになってしまうこともあります」
やはり職員間のコミュニケーションに苦労されることが多いようだ。
福島 「いろんな部署の職員さんに気安く訪れてほしいので、こんな人形を置いたりしてるんやけどね」
見れば可愛らしい人形たちが置かれている。
Q.人形の名前はなんていうんですか?
福島 「あ、名前付けてないわ(笑)」
久米 「苦労といえば主任のお守もありますけど一応これは冗談ということにしておきます(笑)」
いえいえ、こういう冗談を言い合える関係なら大丈夫と思います!
福島 「検食もタイヘンやんね~」
久米 「美味しく食べられる味つけか? 適切な柔らかさか? などチェックしながら食べているので、常にプレッシャーがあります」
福島 「それに検食って、ふつうに美味しく仕上がっていたら一口で済むけど、アレ? って仕上がりのときこそ、修正の指示を出すため何回も食べんとアカンからね」
不味いときほど何度も食べなくてはいけない。考えてみれば皮肉な話である。
仕事で嬉しいこと、プライベート
Q.お仕事うえで嬉しいことは?
福島 「患者さんから、食事美味しかったよ~って言っていただけるときかなあ。がんばって献立考えた甲斐があった!って心が救われるね」
久米 「あとは食事の管理で患者さんの検査値が改善したときでしょうか。健康改善の一助になれた喜びがありますね」
Q.栄養士さんって、プライベートでの食生活もしっかり自己管理してらっしゃるんですか?
福島 「モチロン! ……やんね、久米さん?」
久米 「そうですね(笑)。全体のバランスには気を配っていますし、季節の野菜は取り入れるようにしています。主任さんはお菓子が大好きで、新製品が出たら必ず買っておられるようですけど」
福島 「食の幅を広げるためには、お菓子の新製品をチェックすることも大切なんよ。うん!」
久米 「プライベートでも仕事熱心な、鑑のような主任さんですよね(笑)」
プライベートでも私財を投げ打って新しいお菓子を試食し続ける仕事の鬼、福島主任。そして、そんな主任さんをユーモアも交えながらサポートする久米さんら周りの栄養士さん。
こんな心強い栄養士さんたちが担っておられる当院の栄養管理室は、きっと今後も盤石にちがいないと確信を深めた取材体験であった。
(取材・原稿)臨床心理士・名倉
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