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ドキュメント・ザ・舞台裏/「訪問看護」の現場を潜入レポート!(2023/08)
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「訪問看護」の現場を潜入レポート!
当院の舞台裏を潜入レポートする本企画。今回は特集記事のテーマでもある『訪問看護』に同行して、そのリアルな現場をご紹介します。
当病院に訪問看護ステーションの部門があるのは知っていたけれど、その現場がどんなものか、今まで見たことが無かった。
訪問看護を利用している患者さんや、関係するスタッフから話を聞くことはあっても、実際に現場を知らないだけに、すべては「なんとなく想像」である。
「なんとなくの想像」はたいていの場合、笑ってしまうくらい現実とかけ離れていたりする。
全然関係の無い話で恐縮ながら、以前に知人のクルマが脱輪したと聞いて、タイヤがもげて取れてしまったのか! と驚いていたのだが、そうでなかったことを翌日知って恥をかいた経験が筆者にもある。
閑話休題として、今回突撃するのは訪問看護ステーションだ。無理を言って訪問業務に同行させていただきながら密着取材した現場をレポートしてみたい。
朝のミーティングから出発!
今回ご案内いただくのは、「訪問看護ステーションおうばく」に勤務している看護師の寺崎さんだ。
朝9時の始業に合わせて、カメラを持ってステーションに駆けつける。
Q.ここからステーションの一日が始まるんですね。
「まずは朝のミーティングで、スタッフ同士、情報共有します」
15分ほどで朝礼が終わると寺崎さん、
「では、出発しましょうか」
さっそく訪問に出るとのことで、病院の駐車場に行ってクルマに乗り込む。
Q.本日のスケジュールを聞かせてもらえますか?
「今日は午前に2件、午後に3件の利用者さん宅に伺います。今回の名倉さんの取材は午前だけと聞いてますので、まずは宇治市の1件、次に城陽市の1件を訪問します」
そうなのだ。本当は終日同行したかったのだけれど、私も午後は業務が抜けられず、泣く泣く午前のみの取材となったのだ。
クルマを運転されること20分少々、1件目である宇治市内の利用者Aさん宅に到着した。
Q.えっ、路駐!? キップ切られたり、苦情が来たりとか大丈夫なんですか??
「大丈夫ですよ。訪問看護などを行う私たちのような者は、警察署から許可を得て駐車しているんです」
見れば確かに、ダッシュボードの上に駐車許可証が置かれている。
Q.なるほど。これさえあれば、水戸黄門様の印籠のようなものですね!
「いやいや、道交法で駐停車が禁じられている交差点付近などはもちろんダメですし、法的にはOKであっても近隣のご迷惑になりそうな場合はコインパーキングに入れています」
地域生活の中での業務だけに、いろいろと気遣いされていることを肌で実感する。
1件目のAさんのお宅にて
寺崎さんがお宅のピンポンを押すと、玄関先にAさん(50代男性)とご家族が出迎えてくださった。
当方の同行取材は事前に承諾してくださっており、寺崎さんとともにお宅にお邪魔させていただく。
そのまま居間に案内される我々。寺崎さんは慣れた様子で挨拶され、座ったAさんに心身の調子などを尋ねながら、カバンから道具を取り出してバイタル(体温や血圧、脈拍など)を測定し始めている。
さらに、Aさんが今困っていることや悩んでいることについて訊かれる。プライバシーの関係で詳細は書けないが、ストレスが買い物に向かわないための対処法や、心を穏やかに過ごす工夫などについてである。
その後は、Aさんが好きな音楽についてなど雑談的な会話をされ、30分程度が経過した頃合いに、
「では今日はそろそろ失礼します」
と切り上げられた。
Aさんとご家族が玄関先まで見送ってくださり、お宅を後にする我々。クルマに乗り込み、次のお宅に向かう。
車中でいろいろと質問してみた。
Q.お疲れさまです。いつもこんな感じで訪問されているんですか?
「とくに大きな変化や問題がなければ、だいたいこんな感じですね。バイタルを取って、心身の状態や困りごと、悩みごとを伺って、最後は雑談も広げるように心がけています」
Q.雑談も意識的に広げてらっしゃるんですか?
「そうですね。というのも、病気の話ばかりに終始すると、利用者さんも「病者である自分」に意識が集中して後ろ向きになりやすいんです。病気のつらさやしんどさを伺うことも大切ですが、それだけでなく、病気以外の元気な部分にも目を向けて広げていければと思っています」
なるほど、利用者の方々は精神的な疾患を持っておられることは事実であっても、病気の部分だけでなく健康な部分もたくさん持っておられ、その健康な部分を広げていくことが大切なのだ。
2件目のBさんのお宅にて
そうこうするうちに、次の目的地である城陽市の利用者Bさん宅に到着。先ほどのAさんよりもご高齢で70代男性の方であったが、同じように挨拶してお邪魔させていただいた。
寺崎さんはBさんには、まずバイタルの測定をした後、「お薬のほうはどうですか?」と尋ねながら、なにやらカレンダーらしきものをチェックされていた。
Q.これは何をされているのですか?
「お薬を確実に服用することに不安があるようなので、こうやって服薬カレンダーを用意して、毎回一週間分をセットしているんです」
服薬カレンダーを見せていただくと、一週間分のお薬が1日毎に朝・昼・夜・ねる前に分けて貼りつけられていて、飲んだかどうかがひと目で分かるようになっている。
お薬の飲み忘れを防ぐため、週1回の訪問の都度、次の一週間のお薬をセットするのだという。
服薬カレンダーをセットし終えた寺崎さん、次はBさんの足元に顔を近づけて尋ねられた。
「足の爪はちゃんと切ってはりますか?」
うんうん、切ってますよとおっしゃるBさん。しかし寺崎さんの目はシビアである。
「これはちょっと伸びてますわ。自分では見えにくいでしょうから、こちらで切らせてもらいますねー」
そしてバッグからニッパー形の爪切りを取り出してBさんの足の爪をキレイに切り揃えられた。
こんなことまでしてもらってすんませんなァと恐縮されるBさんだったが、利用者さんの身体面に目を配って、気になる点はケアすることも訪問のお仕事なのだった。
商売道具のカバン拝見!
こうして午前の2件を訪問して、いったん病院に戻ってきた我々。
寺崎さんは午後からも訪問に出られるわけだが、その合間に商売道具のカバンを見せていただくことにした。
Q.このかばんの中身は何が入ってるんですか?
「お見せするほどの物はありませんけどこんな品々が入ってます」
その中身は、バイタル測定に使う体温計や血圧計、聴診器、そして先ほど使ったばかりの爪切りに加えて、名刺入れやメモ帳などだった。とくに奇抜なモノは入っていなかったが、逆に言えば、これらの基本アイテムさえあれば、あとはこれまでの経験と利用者さんとの信頼関係によって、よりよい訪問看護を築くことができるのだろう。
「病棟に勤務していた頃に比べて、利用者さんの社会生活に根差した回復に立ち会えるのが嬉しいです」とおっしゃる寺崎さん。今後も多くの人々を訪問看護で支え続けてくださることだろう。
(取材と原稿/臨床心理士・名倉)
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