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読まないで!?ドクターXの酔いどれ対談/早期退院政策と攻防する入院担当医(2016/2)
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終業後、京都市伏見区の居酒屋Fにて
先生が匿名でしこたま飲んで好き勝手話す本コーナー。小さいながら反響もあって、どの先生が喋ってるんですか? って数人から訊かれました。想像にお任せしますって答えてはぐらかしてますけど。
「名前は出さんといてよ。ていうか、君の創作ってことにしといたら?」
こんな裏話をシロウトの私が書いてるなんて無理ありすぎですよ! まァまァ先生、とりあえず注文しましょう。
「じゃあタコ、タコ……と。ほう、今日はタコの天ぷらあるんや。あと焼酎もらうわ。麦のロックで」
麦焼酎のボトル入れちゃいましょうよ! すみませ~ん。
〈中略。30分間でボトル半分が空いて双方すっかり出来上がる〉
「ふー、今日も疲れた。酒飲んでタコでも食べなやってられへんなぁ〜」
本日も遅くまで残ってはりましたもんね。トラブルでもあったんですか?
「退院支援委員会ってやつがあってなあ。これがもう心底かなんのやわ」
なんか素晴らしい名称の委員会ですが……。
「響きはいいんやけど、これができてから会議の数が2倍以上に跳ね上がったんよ」
どうしてそんなに会議を?
「早期退院政策の一環として、退院に向けた検討会を必ず開催しなさいってお達しが国からあって、法律で決められてしもてん。そんなん言われる前から、患者さんの治療に必要なカンファレンスはその都度やってたわけよ。そこに法律しばりの会議までもが加わって、それで無駄に時間だけとられて診察時間が圧迫されたら、まさに本末転倒ですよ!」
先生が敬語口調で憤慨すると逆にこわいです……(笑)。でも確かにその通りですよね、患者さんにとって何のメリットにもならない。国もどうしてそんなことを?
「僕の邪推かもしれへんけど、『患者さんを入院させてると委員会やら会議やらどんどん増えて大変でしょ? だったら早く退院させたほうが楽になりまっせ~』って圧力かけてるとしか感じられへん。国としても、表向きは患者さんのための早期退院って言ってるけど、実際には医療費を削減したいってとこが大きいからね。ただ、 こっちとしては、 そんなことされんでも退院につなげるようちゃんと考えてます! って話なんよ」
うーむ、厄介ですね。
「ま、ウチら医者もだんだん要領が分かってきて、入院が長くなりそうな患者さんの場合はあらかじめ計画書の日数を長めに書いといて無駄な会議を減らすとか、そういう自衛策をとってるんやけどね」
政府が標榜する早期退院って、聞こえはいいですけどデメリットもあるんですね。早期退院を早急に推し進める欧米でホームレスの数が増えてしまったという話も聞きますけど、そのへんは大丈夫なんですか?
「日本の場合、退院後に患者さんをフォローする訪問看護とかアウトリーチとかのサービスが比較的充実してるから、その心配はないと思うわ。僕が担当した患者さんでも、これらのサービスを導入することで早めの退院につなげられたケースは多いよ」
早期退院政策、デメリットばかりではなくメリットもあるんでしょうか。
「何年も入院しっぱなしって患者さんを作らんように、みんなが意識するようにはなったと思う。1年間も入院してしまうと元の社会に戻るハードルが高くなるからね。患者さんが院内で社会を構築してしまわはると、世間に戻るための社会性が衰えてしまうんや。それが患者さんのためにならへんことは自明やし、一定のメリットはあるんとちゃうかな」
何ごとにも光と影があるということですね。
「政府も早期退院ってここまでうるさく言うんやったら、無理やり会議増やすような法律作るよりも、退院後のフォロー体制をもっと充実させんかいって思うけど、君もそろそろまとめに入ってる感じやし、今回はこの辺で勘弁しとこか(笑)」
さすがご明察! 次回も是非お願いします。
(取材・原稿)べるぶネオ編集部
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