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ドキュメント・ザ・舞台裏/臨床検査技師さんのリアルな裏側お見せします!(2015/06)
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臨床検査技師さんのリアルな裏側をお見せします!
当病院の舞台裏を潜入レポートする本企画。
今回は脳波や心電図などを担当している臨床検査技師さんに取材しました。
のっけから私事で恐縮ながら、筆者が骨折の手術で入院したとき、「この人たちって裏方だなあ……」と感じたのが麻酔医と臨床検査技師さんだ。
麻酔医は手術前の説明で一度話をしたきりそのまま会うこともなく退院となった。お礼の一言くらいは伝えたかったが、「素晴らしい全身麻酔をありがとうございました!」なんて言うのもヘンだし、そもそも麻酔中は意識がないから、素晴らしいも何も皆目分からない。
同じく臨床検査技師さんも、手術前の血液検査や呼吸検査の際に顔を合わせただけで、あとは一度も会う機会さえなかった。
主治医や看護師さんには直接お礼が言えるのに、麻酔医や臨床検査技師さんにはそれができない。なんか不公平だなあとボンヤリ思いつつ、かといって自分のお礼ごときに何の価値もないのは先刻承知しているので、まぁそういえば当院にも臨床検査技師さんがちゃんといたのだった。裏方紹介がコンセプトの本連載にご登場いただいたらピッタリではないか!
思い立ったが吉日、さっそく突撃取材してきました。
当院検査室スタッフ(臨床検査技師)資格取得後、当院に就職して勤続29年目となる。
まずは脳波測定
今回案内してくださるのは、当院の臨床検査技師・吉見さん。
「ウチは精神科だから、脳波を取ることが多いんですよ」
脳が発する電気信号を捉えて記録したものが脳波で、てんかんなどの精神疾患を判別するのに活用されている。微弱な電気信号を捉えるために、電極が付いたヘッドギアを頭にかぶせ、電極と頭皮の間にジェルを注入して、横になった姿勢で測定を行う。眼を開閉したり深呼吸したり、光刺激を与えたりしながら脳波の反応を見ていくのだという。
Q.苦労される点はありますか?
「横になると寝てしまう患者さんもいるんですけど、脳波って眠っちゃうとダメなんです。寝たら脳波ですぐ分かりますから(笑)」
記録された脳波はパソコン画面上に表示され、データとして電子カルテに転送・保存される。これが医師による診断の一材料となるのだ。
「4~5年前までは紙に印刷されていて、1回あたり3メートルくらいにもなって大変だったんですよ」
思い返せば、患者さんの脳波記録の山でデスクがいつもえらいことになっている先生がいたような……。
恐怖の採血!?
血を採られるのは子どもの頃から変わらずゾッとしないが、臨床検査では避けて通れないのが採血だ。
患者さんの身体に注射針を刺せるのは医師と看護師、臨床検査技師の3職種に限られる。ただし臨床検査技師は、治療目的として薬物などを「注入」するのはダメで検査目的として採血等のために注射針を刺す行為だけが認められているとのこと。
「今は注射器も針もすべて使い捨てなんですけど、針には何種類かありましてね」
吉見さんいわく、高齢の患者さんなどで血管が細く普通の針では刺しにくい場合は、もっと細くて短い翼状針というのを使うんだとか。
安全性を高めた真空採血というのもあって、真空圧を利用して血液を試験管に入れるので検査者が針刺し事故を起こさずに済むスグレモノながら、針が太いのでやはり血管が細い患者さんには使いにくいらしい。
「とくに冬場は寒くて血管が縮まるから、血管が細い人の採血には苦労するんです」
Q.そんなときはどうしてるんですか?
「やれる工夫はしてますよ。横たわってもらうと血管が出やすいですし、あとは手をお湯につけてもらって血管を広げたり」
そうおっしゃる吉見さん、筆者の手の血管をチラっと見て「名倉さんのは、採りやすそう!」人に会うとまず血管を見てしまうのは職業病でしょうか。
血圧脈波検査
いつか吉見さんに血ィ吸われるんじゃないかと戦々恐々しながら、次は血圧と脈波の測定だ。この検査によって血管年齢が分かるのだという。せっかくなので実際に体験させていただくことに。
両手両足にベルトのようなものを巻いて測定開始。数分後には終了し、プリントアウトされた結果を見せてもらう。
血圧は右腕と左腕、右足、左足と全て異なっていて、たとえば上の血圧で言うと、右腕だと100なのが、左足だと134ある。吉見さんによれば腕より足のほうが血圧が高いのが普通だが、足の血管が詰まってくるとそれが逆転してしまうんだとか。ちなみに筆者の血管年齢は40代前半との診断で、実年齢とドンピシャでした。
超音波エコー検査
皮膚から超音波を当てて体の内部を調べるエコー検査。各種結石や脂肪肝、心臓の弁異常などが調べられるという。
具体的には、プローブと呼ばれる超音波センサーにジェルを塗り、体表を滑らせながら各臓器を検査していく。このプローブは1個100万円以上する高価な代物なので、取り扱いには気を使うんだとか。
「それに、エコー検査はちゃんと画像を出すのが結構難しいんですよ。プローブを当てる位置や角度がわずかに変わるだけで、読み取れる画像の情報が大きく変わってしまうので、300症例くらいは経験を積まないと良い画像を撮る技術は身につきませんね」
終わりに
これら以外にも心電図検査などあるけれど、普段あまり表舞台に出ることのない臨床検査技師さん。しかし業務光景を取材する中で、ひとつ感じることがあった。
それは、検査する患者さんに対して、常に笑顔で話しかける技師さんたちの姿勢だ。
それでリラックスしていただければ検査もスムーズに行えるだろうし、安心して検査を受けた経験は患者さんの精神的な安定にも好影響するかもしれない。
最後に吉見さんに訊いてみた。
Q.どんなときに仕事のやりがいを感じます?
「検査結果が患者さんの治療につながったときでしょうか。あと、患者さんへのストレスをできるだけ軽減するため、お待たせしないよう他職種と連携するよう心がけてます」
患者さんとの継続的な接点が少ない職種ながら、これからもよりよい治療の一端を担う臨床検査技師として笑顔でお仕事を続けていただきたいと思った取材体験である。
(取材・原稿)臨床心理士・名倉
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