べるぶネオ
ドキュメント・ザ・舞台裏/理学療法士(PT)VS作業療法士(OT)(2022/02)
特集/じつはスゴイ!?「リハビリテーション室」(2022/02) | ドキュメント・ザ・舞台裏/理学療法士(PT)VS作業療法士(OT)(2022/02) |
読まないで!?ドクターXの酔いどれ放言(2022/02) | こんなモン使ってます~!医療機器あれこれ(2022/02) |
理学療法士(PT)VS作業療法士(OT)
リハビリ室に「けしかけ取材」!リアルな裏側をお見せします!
当院のリハビリ室には、理学療法士(以下PTさん)と作業療法士(以下、OTさん)がいるけれど、両者の違いがよく分からないという声をしばしば耳にする。
このような理解不足を一挙解消させるべく、今回はちょっと禁じ手的な取材を敢行してみたい。
リハビリ室のPTさん1人と、OTさん1人つかまえ、でっちあげのウソで挑発して、各々のホンネを引き出すのだ。さっそく、若い2名のスタッフであるPT後藤さんとOT新さんに「けしかけ取材」してみたい。
理学療法士の後藤さんを挑発
後藤さん、取材よろしくお願いします。
後藤 「上司から聞いてます。業務内容の説明を行うんですよね?」
そうなんですけど、先ほどOT新さんを訪ねたところ、逆ギレされましてね。リハビリ室は自分たちOTが主役でPTなんてオマケみたいな存在だと言われてしまいました。そういうものなんですか?
後藤 「新さん、ケンカ売ってるんですかね」
実際はそうではないと?
後藤 「そりゃそうですよ!自分らPTも自負を持って仕事に臨んでます」
では、PTさんならではの業務を紹介してください。
平行棒トレーニング
後藤 「先輩スタッフのWさんにモデルをお願いして実演しますね。まずは平行棒でのトレーニングです」
これはどういう人に、どういう目的で行うんですか?
後藤 「おもに立った姿勢での筋力やバランス能力をアップするために使います。神経の麻痺や骨折、寝たきりによる筋力低下などで歩行障害があると、初めからフリーハンドで歩行練習を行うのは困難です。そのような方に対して平行棒を使うことで、無理なく立ち上がりや歩行練習が行えます。T字杖や松葉杖、歩行器などの前段階として使用することが多いです」
平行棒はどうしてOTさんではなくPTさんがされるんですか?
後藤 「OTは日常生活に必要な応用動作の回復を専門としているのに対して、自分たちPTは立つ、歩く、起き上がるなど、おもに体幹や足を使った基本動作を専門としています。なので、平行棒を用いた練習ではPTの知識の方が活かせると思ってます」
ストレッチ動作
後藤 「次はストレッチです」
これはどういう人に、どういう目的で行うんですか?
後藤 「理学療法ではよく使う手技の一つです。様々な原因で筋肉や靱帯の柔軟性低下、循環障害、疼痛、関節可動域制限などがある方に対し、それらの改善を目的に行います。筋肉が柔軟になり関節がスムーズに動くことで、日常生活での立つ、歩くといった動作の改善にも繋がります。今回は、ハムストリングスと下腿三頭筋という筋肉を伸ばし、関節が硬くなるのを防ぎつつ、足全体の循環を促進させています」
ストレッチはどうしてOTさんではなく、PTさんがされるんですか?
後藤 「ストレッチ自体はOT、PT共に実施します。ただ、OTは家事動作などで腕の柔軟性が必要な場合にストレッチを行うことが多いのに対して、基本動作では体幹や足の柔軟性を必要とするため、そこの知識に特化したPTがストレッチを担うことが多いです」
自転車エルゴメーター
後藤 「自転車エルゴメーターも導入しています」
これはどういう人に、どういう目的で行うんですか?
後藤 「基本動作に必要な筋カだけでなく、その動作を持続するための持久力向上を目的に行います。機器によっては消費カロリーや運動強度、心拍数などを確認しながら実施できるのでモチベーションの維持にもつながります。また、関節への負担が少なく運動ができることもメリットです」
エルゴメーターはどうしてOTさんではなく、PTさんがされるんですか?
後藤 「主に体幹と足を使う運動になるため、体幹と足の解剖・運動学に特化したPTの知識がここでも活かせると思ってます」
なるほど!ご紹介ありがとうございました。
作業療法士の新さんを挑発
お次はOTの新さんがターゲットだ。
新さん、よろしくお願いします。
新 「上司から聞いてます。日頃の仕事について話せばいいですか?」
そうなんですけど先ほどPT後藤さんを訪ねたところ、リハビリ室はオしたちPTが仕切っていて、OTなんてザコですよって言われました。
新 「えーっ、後藤さんヒドい……」
実際はそうではないと?
新 「僕たちOTもがんばってますよ!」
では、OTさんならではの業務を紹介してください。
入浴トレーニング
新 「はじめにご紹介したいのは入浴トレーニングです」
これはどういう人に、どういう目的で行うんですか?
新 「実用的な動作獲得を目的に、さまざまな患者さんに実施しています。入浴は筋力やバランス能力などが要されるので、意外と難易度が高いんです。残存する身体機能を評価し、やりやすい順序や環境を考え、より良い方法を検討します。自宅環境に近づけて実際の浴槽を使用するため、イメージしやすい利点があるんです」
入浴トレーニングはなぜ、PTさんではなく、OTさんがされるんですか?
新 「入浴はADL(日常生活動作)のひとつに含まれます。OTは入浴する、若替える、食事するといった生活動作の評価や、治療手段としての活用に特化しています。身体機能の回復や向上だけでなく、過去~現在の生活を評価して、将来必英となる動作の練習を行います。だからこそ、生活動作を専門としている僕たちOTが、入浴トレーニングを実施することが多いんです」
調理実習
新 「調理の実習もしています。こんな風に玉ねぎを切ったりですね」
これはどういう人に、どういう目的で行うんですか?
新 「主婦や一人暮らしの男性の方に実施することが多くて、退院前の準備練習として実施しています。男性患者さんでは、入院を経て「自炊したいけど分からない」という声が多く、包丁を練習したりカレーなど料理を作ったりもします。調理動作は手先の器用さ、立ち仕事でのバランス感覚、注意集中カなど、たくさんの要素が影響し合っているので、どこで失敗しやすいか?どんなアドバイスが有効か?などを考えながら実施しています」
調理実習はなぜ、PTさんではなく、OTさんがされるんですか?
新 「調理はIADL(手段的日常生活動作)のひとつで、電車に乗る、買い物に行くといった社会生活に必要な動作に含まれます。主婦と一人暮らしの男性では調理内容や目的が異なるように、IADLもさまざまな目的や方法があります。OTは疾患や障害にとらわれず、「生活」に注目した関わりに特化しているため、調理練習なども治療プログラムとして実施できるんです」
編み物練習
新 「編み物もOTならではの業務と言えますね」
これはどういう人に、どういう目的で行うんですか?
新 「おもに趣味活動でされていた女性の患者さんと行うことが多いですね。編み物は作り方や方法を変えやすいので、さまざまな目的に合わせて実施できます。完成させる達成感や、楽しみ体験が快刺激につながって、不安やストレスの軽減効果が期待できます。入院中は自己決定が少なくなりがちですが、編み物が趣味だった患者さんからスタッフが教わる形で関わることで、主体的な役割活動を担っていただくこともあります。また、活動を通して指の筋力向上や、座って行うことで姿勢保持の練習にも、複雑なエ程を集中して取り組むことで脳への刺激にも繋がります」
編み物練習はなぜ、PTさんではなく、OTさんがされるんですか?
新 「OTの専門性に、ADLやIADLといった生活動作だけでなく、趣味や生きがい等、その人にとって重要な作業活動も注目する視点があるからです。もちろん、心身の機能維持・回復のために生活動作を用いることはあります。でも、入浴や調理と同じくらい、趣味活動など「その人にとって意味ある作業」も生きていくためには必要不可欠なんです。OTはこういった視点からも専門的に関わっています」
なるほど!ご説明ありがとうございました。
二人のご対面
さて、いよいよPT後藤さんとOT新さんを引き合わせての直接対決である。お二人さん、さあどうぞ!
後藤 「ちょっと新さん、PTはオマケだなんて、そこまで言いますか?」
新 「僕そんなこと言ってませんよ?それより後藤さんこそ、OTはザコだって言ってたそうじゃないですか」
後藤 「言ってない、言ってない!え、どういうこと??」
新 「……もしかして名倉さん、僕らを騙してハメました?」
すみません!盛り上げたくて、つい吹いてしまいました。
後藤 「そうだったんですね……」
新 「後藤さんと争わなくて安心しました(笑)」
実際には、ご両人どうなんでしょう?
後藤 「実際のところ、どちらが上とかは無く、リスペクトし合うことが大切だと思います。基本的な動作や身体機能に対してPTが練習することで、土台を整えます。
そしてOTが応用動作を練習することで、患者さんのゴール達成を支援する。……ですよね?新さん」
新 「僕も同意見です!どうしても「リハビリ」としてまとめられ、PTとOTの職種が混同されがちですが、専門的な技術や視点は異なっているので、どちらも欠かせないものだと思います。それぞれの役割を理解しつつ、互いの専門性を活かした関わりが大切ですね」
では最後に、お二人が大切にしてらっしゃることは?
後藤・新 「お互いが協力して、患者さんにより質の高い支援を提供できることです!」
....というわけで、最後はお互いにハイタッチの代わりに腕タッチで信頼を確認し合うお二人でありました。いやいや、スミマセンでした!
(取材と原稿/臨床心理士・名倉)
特集/じつはスゴイ!?「リハビリテーション室」(2022/02) | ドキュメント・ザ・舞台裏/理学療法士(PT)VS作業療法士(OT)(2022/02) |
読まないで!?ドクターXの酔いどれ放言(2022/02) | こんなモン使ってます~!医療機器あれこれ(2022/02) |