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読まないで!?ドクターXの酔いどれ対談/減薬のチャンスに苦慮する外来担当医(2015/10)
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終業後、京都市伏見区の居酒屋Fにて
先生、毎度どうもです。酔っ払って匿名で好き放題喋るという本コーナー、なんとか存続することになりました。今回は祝い酒といきましょう! 注文は何にされます?
「お、タコときゅうりの酢の物あるやん。それと日本酒……坤滴にしよかな。冷やで」
承知しました。店員さん呼びますね。
「きゅうりは身体にもいいよ。カリウムとか豊富やから水分摂取に向いてる。中国人なんてカバンにきゅうり入れてポリポリ食べながら歩いてるもんな」
そうなんですか。私も今後はきゅうりの摂取を心がけます。〈中略。小1時間が経過して冷酒と焼酎の応酬の末、もはや分量不明〉
先生、やっぱり調子よさそうですよ~!
「よう言うわ。僕なりに日々、いろんな葛藤があるねん」
失礼ながらあまりそのように見えませんが……たとえばどんな?
「前回、患者さんの数が増えてるって話したけど、背景には製薬会社のキャンペーンの影響もあってなァ。市民に向けてのキャンペーンと、僕ら医療関係者に向けてのキャンペーンの両方。受診への敷居が低くなったんはいいことなんやけど、それが逆に患者さんにとってデメリットになってる面もあると思うねん」
市民に向けてのキャンペーンというのは?
「とにかく早期受診をすすめるテレビCMよく見かけるやろ。うつ病もそうやけど、高血圧とか頻尿とか。この症状は病気ですから早く受診すれば早く治ります!ってメッセージなんやけど、あれ、製薬会社にとっては患者さんの掘り起しが目的で、ほんまに治療が必要な人にとってはメリットになるけど、病気とまでは言えへん人が不必要な治療を受けることにもなりやすいんよ」
医療関係者に向けてのキャンペーンというのは?
「クリニックとか病院でよく見かける製薬会社のMRさんいるやろ。精神科だけでなく、内科のクリニックとかにも抗うつ薬や抗不安薬を売り込んではったりする。抗うつ薬を使うのってほんまは知識と経験が結構必要なんやけど、キャンペーンの結果、他科の先生が安易に抗うつ薬とか処方してかえって治療がこじれることもあるからねえ」
それって結局、誰も得しないと思うんですけど……。
「いや、みんなが得するねん。短期的にはね。製薬会社はたくさん薬が処方されて儲かるし、病院は処方箋料で儲かるし、患者さんも薬を出してもらうと安心するしで。まァ、僕みたいな勤務医はいくら処方しても自分の給料は変わらへんから、薬が不必要な患者さんに処方するようことはないけどね……」
製薬会社、医療機関、患者さんの三者で利益が合致してしまってるわけですか。
「ただ、短期的にはよくても長期的にはちっともよくない。あまり必要のない抗不安薬なんかを漫然と処方し続けると、耐性とか依存性とか脱抑制とか、長期的には患者さんの不利益につながるケースもある。もちろんそういう説明はするし、患者さんも頭では分かってくれはるけど、とりあえず薬飲んでる方が楽やから処方を希望されることも多くて。これを断ち切るのはなかなか大変で、医療者として葛藤することも多いよ」
どうやって断ち切ればいいんでしょう……。
「患者さん本人がふらつきとか何か不都合を実感して、このまま薬を飲み続けることに疑問を感じてくれはった時がスーパーチャンスで、すかさず減薬の説明と提案を入れたりするね」
先生も意外といろんな葛藤や苦労を抱えておられるんですねえ。
「大枠で言うと医療の仕組みそのものの問題になってくるんやけど、大風呂敷になりそうやし今日はこのへんで」
承知しました。次回も是非お願いします。
(取材・原稿)べるぶネオ編集部
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