近年、いろんな「うつ病」が提唱されています。従来型うつ病、仮面うつ病、産後うつ病、昇進うつ病、新型うつ病、回避型うつ病、非定型うつ病などなど……。正式な診断名でないものも含めると、両手の指ではとても数えきれないほどです。
おうばく通信
おうばく心理室コラム
2015年11月 5日 (木)
2015年10月 5日 (月)
【おうばく心理室コラム/2015年10月】アサーション(自己主張)と損得勘定
広く知られているカウンセリング技法のひとつにアサーショントレーニング(自己主張訓練)があります。大ざっぱに言うと、私たちのコミュニケーションを「非主張的」「攻撃的」「主張的(アサーティブ)」の3つに分類したうえで、最も適応的なのはたいていの場合「主張的」な自己表現であるから、こういうコミュニケーションを取れるよう心がけていきましょうというわけです。
詳しくは入門書等をお読みいただくとして(読みやすい書籍が多く刊行されています)、本稿ではこの療法のエッセンスを紹介しながら、私見を添えてみたいと思います。
2015年9月 5日 (土)
【おうばく心理室コラム/2015年9月】認知行動療法の効果が無くなってきている!?
先日参加した2015年度日本うつ病学会&日本認知療法学会の席で、ちょっと衝撃的な報告の存在を知りました。 『Psychological Bulletin』(世界的に有名な心理学論文誌のひとつ)の2015年5月号に掲載された「The Effects of Cognitive Behavioral Therapy as an Anti-Depressive Treatment is Falling: A Meta-Analysis」(Johnsen & Friborg, 2015)という記事で、タイトルを訳すと「うつ病治療における認知行動療法の効果は下落し続けている」というのです。
認知行動療法の治療効果は実証が積み重ねられ続けているものだとばかり思っていた筆者にとっていささかショッキングな内容であったため、インターネットで入手した原典をざっと読んでみました。今回はその報告の概要をお伝えしながら、私見を添えてみたいと思います。
なお本稿では、論文の一部分を和訳して引用掲載していますが(筆者の英語力は甚だ心もとないものの、英語にも日本語にも堪能なPh.Dに添削をお願いしましたので、訳文に大きな誤りはないと思われます)、英文の原典はこちらに公開されていますので、よければ併せてご参照ください。
2015年8月 5日 (水)
【おうばく心理室コラム/2015年8月】気分やテンション、いくら待っても上がらないんですけど!?
できることなら毎日、元気いっぱいで楽しくすごしたい! 多くの人がこのように願っておられることと思います。 しかし現実には、気分やテンションが盛り上がらないときも多い。どうしてだろうと考えてみるも、思いあたる原因はとくに見当たらない……。気分よ早く上がってくれ! と待ってみても一向に上がらないし、考えれば考えるほど余計にイライラして気が滅入ってくる。
こんな悪循環を経験された人もいらっしゃるのではないでしょうか。じゃあ一体どうすればいいんだよ?? 気分やテンション、いくら待っても上がらないんですけど!?
今回のコラムの結論から申し上げるとズバリ、考える前に行動してみることです。…って、あまりにも当たり前すぎて眩暈(めまい)がされるかもしれませんが、このことの背後にある心理学的なメカニズムを知っておくと、いざというとき実行に移しやすくなると思いますので、愛想を尽かさずもうしばらくお付き合いいただければ幸いです。
2015年7月 5日 (日)
【おうばく心理室コラム/2015年7月】「グレーの箱」ってなに!?
先日、ある患者さんから「グレーの箱に入れておけばいいってことですね」との言葉を聞いて、なるほど上手い表現があるものだなあと感心しました。
グレーの箱というのは、すぐに白黒つかない事柄をとりあえず一時的に入れておくための、心の中の箱なのだそうです。その患者さんは、ほんとうは見通しが立たないことが苦手で、どんなことでもすぐに白黒つけてスッキリしたい性分らしいのですが、世の中なかなかそうはいきません。そんなとき、ずっとクヨクヨ考えてしまうとしんどくなるので、いったんグレーの箱に入れて、そのままにしておくよう心がけているというのです。
2015年6月 5日 (金)
【おうばく心理室コラム/2015年6月】酔客に対する見事な切り返し
私がときどきお邪魔している、近所のとある蕎麦屋さんにてのエピソードです。
五十歳くらいの品の良いご主人が切り盛りしてらっしゃるこの蕎麦屋さん、手打ちの美味しい蕎麦と、いくつかの一品、そしてご自身の選による美酒がいただけるうえにお値段も決して高くないとあって、いつも常連客でにぎっているひそかな名店なのですが。
先日、私が蕎麦がきを肴に地酒をチビチビいただいていたところ、「お酒もう一杯お願い」と注文した隣のカウンター席の酔客――かなり長っ尻してすっかり出来上がっている体の五十歳過ぎ男性――に、ご主人が見事な切り返しで応じておられて、さすが接客のプロ! といたく感心したのでした。
ちなみにどんなやりとりだったかというと、
2015年5月 5日 (火)
【おうばく心理室コラム/2015年5月】「病気だからできない」ことと、「病気であってもできる」ことと
臨床心理士という仕事をしていると、心理学や精神医学とは全く関係のない一般作品から、気付きを得ることがしばしばあります。不勉強の身でエラソウなことは何も言えないながら、「専門バカには決してならないように」との恩師や諸先輩方からの言葉を実感します。
そんな一般作品のひとつが、三谷幸喜の演劇&映画作品『笑の大学』です。筆者が観たのはずいぶん前で、あらすじもうろ覚えですが、たしか舞台は日本が太平洋戦争に突き進んでいく状況下。
2015年4月 5日 (日)
【おうばく心理室コラム/2015年4月】どうして私が京大に!? 医学部に!?
知り合いの京大関係者が、昨今の現役京大生と接する中で次のような指摘をしておられて、思わず「なるほど!」と膝を打ちました(わたくし古いタイプの人間なもので、感心すれば膝を打ち、可笑しければ腹を抱え、後悔すれば臍を嚙みます)。
なんでも、「どうして私が京大に!?」といった触れ込みの大手予備校が近年いろいろと登場していて、その主旨は「当予備校は京大に目標を定めた緻密なカリキュラムを提供することで受験者の合格率を高めています!」「したがって自分がまさか受かるとは思っていなかった人でも京大に合格するケースが続出しています!」ということらしいのですが。 こういった受験勉強を経て京大に入ってくる学生さんは、その後の学生生活がうまくいかず、不適応に陥ってしまう場合が多い印象を受けるというのです。
2015年3月 5日 (木)
【おうばく心理室コラム/2015年3月】「自己満足」の功、「誰かのため」の罪
自分のためではなく誰かのために行動することが私たちにはあります。世間一般で自己犠牲と言われる行動で、心理学では利他的行動と呼ばれます。今回はこの利他的行動の功罪、そして逆に自己満足の功罪について少し考えてみたいと思います。
2015年2月 5日 (木)
【おうばく心理室コラム/2015年2月】アドラー心理学のすすめ
先日参加した学会で、「世間ではアドラー心理学が静かなブームになっている」と知り合いの先生から聞きました。
アドラー心理学。私自身は体系的に学んだことはなく、当院に就職した十数年前に、素養のひとつくらいの気持ちで入門書を読んだ経験しかないものの、ずいぶんと前向きでユニークな考え方だなァと当時感心した記憶があります。
ただ、私の興味はすぐに認知療法や行動療法、対人関係療法などに向いてしまい、アドラー心理学は手つかずのまま時が流れてしまったのですが、今回関連本を読み返してみたところ、いやーこれが実に興味深い!!