おうばく通信
おうばく心理室コラム
2015年8月 5日 (水)
【おうばく心理室コラム/2015年8月】気分やテンション、いくら待っても上がらないんですけど!?
できることなら毎日、元気いっぱいで楽しくすごしたい! 多くの人がこのように願っておられることと思います。 しかし現実には、気分やテンションが盛り上がらないときも多い。どうしてだろうと考えてみるも、思いあたる原因はとくに見当たらない……。気分よ早く上がってくれ! と待ってみても一向に上がらないし、考えれば考えるほど余計にイライラして気が滅入ってくる。
こんな悪循環を経験された人もいらっしゃるのではないでしょうか。じゃあ一体どうすればいいんだよ?? 気分やテンション、いくら待っても上がらないんですけど!?
今回のコラムの結論から申し上げるとズバリ、考える前に行動してみることです。…って、あまりにも当たり前すぎて眩暈(めまい)がされるかもしれませんが、このことの背後にある心理学的なメカニズムを知っておくと、いざというとき実行に移しやすくなると思いますので、愛想を尽かさずもうしばらくお付き合いいただければ幸いです。
さて、世間一般でよく耳にするのが「今日はテンションが低いから、やる気が出なくて何もできない」といった言葉です。この場合、テンションが原因で、何もできないのが結果ということになりますが、果たしてそうでしょうか? 「原因」を解決するためには、まずテンションを上げなければなりません。しかし、「なるほど、じゃあテンション上げよ~っと」と言って即座に変えられる人などいるでしょうか。どこかにテンション調節スイッチが付いていればたしかに便利かもしれませんが、幸か不幸か私たちは工業機械ではありません。
では視点を逆転して、何もしないことが原因で、テンションが結果だとしたらどうでしょうか? 何もせずあれこれ考えてばかりいるから、ますますイライラして余計にテンションが下がってしまった。でも、その日約束があって仕方なく外出してみたら、いつの間にか気持ちも晴れていた……。
テンションや気分は「原因」ではなく、行動の「結果」だと考えるほうが、原因を解決できる可能性が高いのです。なぜなら、テンションや気分を単独で変えることはなかなかできないけれど、何かをするしないという行動は私たちの意志の力で変えられるから。そして実際、えいやっ! と行動してみたら気分も変わることのほうが多いのです。
カウンセリングでもこのようにご説明・ご提案することがあり、ではテンションが上がらないときにはどんなことをしてみましょうか? という具体案まで取り決めることもあります。行動計画という形であらかじめやることを決めておいたほうが、一般的に私たちは行動しやすいからです。
ただし場合によっては、「決めておいた行動を実際にやってみましたけど、気分が上がりませんでした」とおっしゃるかたもいらっしゃいます。そこで「一体どうしてくれるんですかっ!?」と詰め寄られるとこちらも困ってしまうのですが(笑)、そういうときはこうお尋ねします。「行動してみたところ気分やテンションが上がらなかったようですが、では何もせず家でゴロゴロしていたご自分と、気分が上がりはしなったものの○○の行動がとれたご自分とでは、どちらのほうがいいと思いますか?」と。 たとえテンションは上がらなかったとしても、行動できたこと自体、治療上の前進なのです。
ちなみに筆者の場合、気分が沈みがちなときにはできるだけ自宅から出るように心がけていて、サイクリングに出かけたり買い物に出かけたりすることが多いです。自宅で過ごすときは、難しく考える必要のないアクション映画をDVDで観たり、好きな料理を作ってみたりすることが多いでしょうか。
本コラムも実は、書き始めるまではたいてい億劫で仕方ありません。書くこともとくに思い浮かばないし、仕事の合間をみて書くのも面倒だし……と思いながらも、月に一度のおつとめのような気持ちでパソコンに向かって数行書き始めてみると、なぜか興が乗ってきて楽しく書けてしまうのが通例だったりします。
そんなわけで皆さまも、気分からではなく、行動から変えてみませんか??
文責:臨床心理士・名倉