心の状態は心理面だけで決まるわけではなく、その前提として「食事」「運動」「睡眠」の影響も非常に大きいという話を前回のコラムに書きました。今回は「運動」とメンタルの関係について紹介したいと思います。
おうばく通信
おうばく心理室コラム
2016年9月 5日 (月)
2016年8月 5日 (金)
【おうばく心理室コラム/2016年8月】心の健康を保つために大切なこと~食事編
本コラムでは今まで、心を健康に保つために大切なポイントについて種々紹介してきましたが、いずれも心理学的な見地からのものでした。孤独感の解消、アサーション(自己主張)の向上、まず行動から始めること、自己効力感の涵養、マインドフルネスの習慣、失敗したときの解決的思考などなど…。
ただ、心の状態は当然のことながら心理面だけで決まるわけではなく、それ以外にも多くの要因に左右されています。代表的なものだけでも「食事」「運動」「睡眠」の3つはメンタル面に非常に大きな影響力を持っていると言われており、数多くのエビデンスが示されているとともに、筆者の実感としても本当にその通りだと痛感しています。
とくに食事は、うつ病との関連性が大きいと言われています。たとえば、脳内分泌物質のひとつであるセロトニンを枯渇させないためにトリプトファンやオメガ3系脂肪酸を多く含む食品をしっかり摂るほうがいいこと、血糖値を乱高下させないために高GI値食品(精製糖や小麦粉など)を取り過ぎないこと、余分な体脂肪が増えすぎると内分泌のバランスの崩れからメンタル面の不調を来しやすいのでカロリーオーバーに気をつけること、心身のバランスを整えるため各種ビタミンやミネラルもまんべんなく摂ること、等々です。
そこで今回は心の健康を保つために大切な「食事」について、教科書的な説明だけでなく、筆者の実感もまじえながら考察してみたいと思います。
2016年7月 5日 (火)
【おうばく心理室コラム/2016年7月】孤独、について二言三言
心身の健康を維持するために大切なこと、避けるべきことは種々ありますが、その大きな要因の一つが「孤独感」です。
社会的に孤立している人ほど、心筋梗塞や脳血管疾患、循環器疾患、がん、呼吸器疾患、消化器疾患、うつ状態など、さまざまな身体疾患やメンタル不調に陥る可能性が跳ね上がるというデータが報告されています。孤独感は高血圧や肥満、運動不足、喫煙に匹敵する、あるいはそれ以上に大きな、健康上のリスクファクターなのです(詳しくは『孤独の科学』河出書房新社・刊などご参照ください)。
孤独感が疾患につながるメカニズムについては、さまざまな視点からの指摘がなされていますが、私見も交えつつこの問題について考えてみたいと思います。
2016年6月 5日 (日)
【おうばく心理室コラム/2016年6月】セルフコントロール力の高めかた
心を健康に保つために大切なことは種々ありますが、そのひとつが「セルフコントロール力」(=意思の強さ)です。
……このように言うと、それって順序が逆転してるんじゃないの!? とおっしゃる向きもあるかと思います。心が元気な時はセルフコントロール力も高まるし、心がしんどい時はセルフコントロール力も低くなる。ただそれだけのことじゃないの?? と。
確かにそのような方向の因果関係もあると思います。心の余裕がなくなるとセルフコントロール力も下がるという経験は多くのかたが持っておられることでしょう(筆者もその一人です)。ただ、心理学の研究によれば、セルフコントロールは努力で高めることができるし、それが高い人ほど心の健康を保つことができると言われているのです。
これがどういうことか、順を追って考えてみます。
2016年5月 5日 (木)
【おうばく心理室コラム/2016年5月】「コラージュ療法」という技法
「コラージュ療法」という技法をご存知でしょうか? 芸術関係に明るい方はピカソやブラックらによる現代芸術の数々を連想されるかもしれません。
コラージュはもともと「貼り付ける」という意味のフランス語で、接着剤としても使われる膠(にかわ)に語源があります。それが証拠に、原語の”Collage”の末尾に”-n”を付けて名詞形にするとコラーゲンとなります。動物の骨などを炊いて抽出したコラーゲン(=膠)を糊として用いる文化が欧米にはあって(日本はお米などのデンプンを糊とする文化ですが)、そのため「コラージュ=貼り付ける」という意味で言語が成立してきたのです。
2016年4月 5日 (火)
【おうばく心理室コラム/2016年4月】カウンセラーをしていて悲しいこと
前回コラムでは「カウンセラーをしていて嬉しいこと」を書いたので、今回はカウンセラーという仕事をしていて悲しいことについて書いてみます。
まず筆頭にくるのは、「患者さんの症状が悪化したまま元気になってくださらないとき」です。私たちとしては、患者さんのつらさを少しでも軽くできればとの一心から、カウンセリングを通じてさまざまな関わりや提案をするわけですが、それらが一向に功を奏さず患者さんのつらさが続いたり、むしろ状態が悪化したりすると、病気の重さを嘆きたい気持ちや、それを軽減できない自分のカウンセラーとしての未熟さを責める気持ち、患者さんに対する申し訳ない気持ちなどが入り混じって募ってきます。
2016年3月 5日 (土)
【おうばく心理室コラム/2016年3月】カウンセラーをしていて嬉しいこと
「カウンセラーという仕事をしていて、嬉しいことと悲しいことは何ですか?」
ずいぶんと前に心理の学生さんからこんな質問をされたことがあります。咄嗟のことでもあり、また当時は今以上に経験も浅かったので、あまり下手なことも言えないと留意しつつ無難な内容を手短に伝えたおぼえがありますが、以降、本当のところは何なのだろうなあとふと考えることが時折あります。
…というわけで、まずは「嬉しいこと」から挙げると、なんといっても「患者さんの症状が改善して元気になってくださったとき」がダントツでトップです。 私たちが何のためにカウンセリングをしているかと言えば、患者さんの苦しさが少しでも軽減されてご本人が望む方向に歩んでいけることを目的にしているわけですので、この目的が達せられたら自分が少しでもお役に立てたと思えて、心から嬉しく感じるのは当然と言えましょう。
2016年2月 5日 (金)
【おうばく心理室コラム/2016年2月】悪徳カウンセラーの見分けかた
「カウンセリング」という言葉には、なんとなく胡散くさい雰囲気というか、そのような先入観が世間的にあるような気がします。
なんといってもカウンセラーには法的な国家資格がないため(2016年2月現在)、どんな人でも自ら名乗れば「自称カウンセラー」になれてしまう実情があります。現在のところ、臨床心理士という資格が指定大学院の修了と学科試験および面接試験への合格という最もしっかりした基準を課している認定資格とされていますが、それ以外にもさまざまなカウンセラー関係の資格が存在し、中には通信教育のみで取得できるものもあるようです(なお、医師からの指示による心理臨床行為を主な想定とした「公認心理師」という国家資格が近年内に開始されることが先の国会で決議されました)。
その結果、スピリチュアル系や占い系などを含めてさまざまな人たちが「カウンセリング」を掲げる現状に至っており、このことが冒頭に述べた胡散くささの一端を担っているように感じています。スピリチュアルや占いを否定するわけではありませんが、これらの中には悪徳と思われるもの、反治療的と思われるものが一部あるのは事実だと思っています。
そこで今回は、悪徳なカウンセリングとそうではないカウンセリングとの見分け方についての私見を述べてみます。
2016年1月 5日 (火)
【おうばく心理室コラム/2016年1月】失敗したときに「なぜ?」と考えるのは避けましょう
私たちは何かに失敗すると、「なぜ失敗したんだろう?」と考えがちです。
しかし、ここに落とし穴があります。なぜなら、失敗して落ち込んでいるときに「なぜ?」と考えると、必要以上に自分を責めるような考え方に陥りやすいからです。
カウンセリングの場でも、とりわけ解決志向アプローチなどでは、患者さんが失敗したり、症状を悪化させたりしたときに、「なぜ?」と訊くことはほぼ無いと断言できます。こういうときに「なぜ?」と原因を追及すると、患者さんは自分が責められていると感じやすいからです。
2015年12月 5日 (土)
【おうばく心理室コラム/2015年12月】認知療法のちょっとしたコツ
認知療法(認知行動療法)でよく使われるツールに「思考記録表」があります。
一般的には「コラム法」と呼ばれるもので、5つのバージョン、7つのバージョンなど幾つかのバリエーションがありますが、基本的には、「ネガティブな気持ちが強くなったとき、そのきっかけとなった状況と、そのときの気分、そのとき浮かんだ思考(=自動思考)をシートに書きながら、自動思考がほんとうに現実に即した考え方かどうかを検討する」というプロセスを実行します(当カウンセリングセンターでも使っておりホームページにもアップロードしていますので、よければご参照ください)。
この思考記録表、認知療法の初心者はややもすると、状況と自動思考が漠然とした状態のまま無理やりポジティブな考え方をひねりだして記入する傾向があります。たとえば……