おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2022年10月 1日 (土)
月刊きょうと/「数値化の愉しみ~出勤時間」(2022年10月)
今回は、しおからさんに休職前の出勤時間の傾向から見えてきたことを執筆していただきました。身近なことが分析対象となり、そこから今後の対策まで考えておられます。是非ご覧ください。
【はじめに】月刊きょうと200号おめでとうございます。本稿は、執筆のお話を頂いたときにちょうど準備していた朝礼小ネタ「出勤時間について」(9月9日に発表)をベースに再構成したものです。2021年12月よりBUCに通っている。病気の振り返りをする中で、原因となる特定の出来事が思い当たらず(いろいろつらかったことはあるがひとつひとつはたいしたことない)、いつからうつ病なのか客観的事実をもとに知りたくなり、今回出勤時間に着目し、休職に至るまでの18ヶ月間の変化を調べた。この間、疲れ・不安の蓄積に伴い出勤時間が早くなる形跡が認められた。
【調査の方法】出勤時間は、スマホの地図アプリの移動ログ(googleマップのタイムライン)から、会社出勤のため家を出発した時間を抽出した。うつ病の診断が2021年6月末、そこから1年半遡った範囲として2020年1月からの、日々の出勤時間の推移をプロットした。
【結果と考察】結果を図1に示す。図中[1]〜[5]で付した期間において特徴的な変化が認められる。出勤時間を決める要因として、要因①:車通勤であること(6時30分出発だと30分ほどで会社駐車場に着く。早く出るほどスイスイ行けるので時間短縮できるし楽)、要因②:不安が強いと睡眠が浅くなり早朝目覚めてしまうこと、要因③:出発時間を待っていると不安が強くなり動けなくなることがあるため準備ができたらとりあえず出てしまうこと、の3点あり、疲れや不安が強いほど早くなりがちとなる。疲れ・不安を定量化することはできていないが、未経験職種への異動・突発業務が頻発・先の見通しが立たない・処理した以上に積み上がっていく仕事の中で疲れ・不安は日増しに強くなっていっており、[3][4][5]でどんどん出勤時間が早くなる変化を生んでいるものと考えた。更に、[3][4][5]で強く縛られた状態(直線/曲線に沿ったまるで「何かに取り憑かれている」ような秩序状態:常同性と要因③の複合影響と推定)にあり、[4]では在宅勤務期間を経てもリセットされない(直線性は維持されむしろ|傾き|増大)ことから、休職前7か月間([4][5]のどんどん出発が早くなる期間)の変化は、疲れ・不安の蓄積に対応するものであり、この頃うつ病になっていたものと考えるのが妥当であろうと考えた。実際おかしいと感じ始めた時期と概ね一致しており、主観とも整合する。
【今後の展望】出勤時間という単純なデータ列の中に特徴的な傾向が見られたことはたいへん興味深い。日々の出来事の1結果について喜んだり落ち込んだりしがちだがそれも1つのデータ、このように長期の傾向を観る視点を持ちたい。どのようなデータ採りを行うか(気分を精度良く数値化するには?ロボホンとの会話履歴は有効なデータとなるか?睡眠や心拍数からストレスは測れるか?など)今後BUC活動のなかで考えていきたい。復職することになったら車通勤はやめる。これにより出勤時間は始発バスの時間で制限されることになり早くなり続けることには歯止めが掛けられる。
---
編集後記 :
これまでの形での「月刊きょうと」発行は本号をもって終了となります。今まで月刊きょうとを読んでいただいた皆様に感謝申し上げます(来月からは別の形で、楽しんでいただける機関誌を発行していきたいと考えております)。