おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2022年8月 1日 (月)
月刊きょうと/「成功すべくして成功したBTS」(2022年8月)
今回は、なっちゃんさんに「成功すべくして成功したBTS」と題して、マーケティングの視点からBTSの魅力を書いていただきました。
防弾少年団(BTS)に本格的にハマり、早や1年が過ぎました。KPOPをほとんど聴いたことがなかった私は、全歌詞英語の『Dynamite』をきっかけに彼らの存在を知り、『Butter』でファンになってしまいました。偶然読んでいた本の一部を参考に、BTSが世界で人気を誇るまでの仕組みについてお伝えしたいと思います。この本では、「ビジネスの成否は確率で決まる。その確率はある程度は操作できる」と主張し、BTSは成功すべくして成功したKPOPアイドルであったと納得ができました。
消費者はカテゴリー別に好み(プレファランス)があります。この好みの組み合わせのガチャが脳内に複数用意してあると考えて下さい。このガチャは、過去の購買経験によって消費者の脳内に無意識のうちに作られて、消費者はこの中から買う商品をランダムに選ぶようになります。本例に当てはめると、KPOPという種類のガチャには、BTS、TWICE、BIGBANG等の多数のガチャ玉があり、このガチャ玉の比率がプレファランスです。BTSのガチャ玉が9割を占めていたら、BTSの商品を手に取る確率は必然的に上がりますよね。要するに、消費者のプレファランスの向上を徹底した活動に注力した結果、世界中でBTSのガチャ玉が引き当てられているのです。
また、プレファランスを決める3要素もしっかりと構築されていました。①他のKPOPアイドルにはない、強いブランドコンセプト(10代、20代に向けられる社会的偏見や抑圧を防ぎ、自分たちの音楽を守り抜く)。特にデビュー当時は、彼らの思いがストレートに歌詞に乗せられた楽曲が多く発表されています。②商品としてのパフォーマンス。消費者は失敗を恐れ、一度信頼したブランドに留まる傾向にあります。どの音楽番組やライブでも圧巻したパフォーマンスを披露し、ファンとの信頼関係が生まれます。③ライブやグッズの価格。ライブチケットは約1万円で、日本での海外アーティストと比較するとお求めやすい価格設定です。こうした土台固めがあり、彼らのプレファランスは向上し、次のステップとして、’21年に『Dynamite』で世界の市場に飛び出します。
世界の成熟した市場での経営配分先は3つです。①自社ブランドのプレファランス。KPOP市場では十分に他グループとの差別化を行いましたが、世界の市場では顧客のプレファランスを狭めないことが大切です。この投資目的はあくまで、市場のプレファレンスの増加のため、万人に支持されているディスコ調、サビの特徴的なダンスを起用することで、多くの新規ファンを獲得しました。②認知。全歌詞英語にすることで、KPOP業界だけでなく、洋楽のジャンルにも活躍の場を広げ、グループとしての認知率を向上させました。③消費者の何%が買おうと思えば買えるかの配荷。BTS単独はもちろん、企業とのコラボ商品を数多く生み出し、例えば、LOTTEのキシリトールガム等、多くの店頭で彼らに関する商品の配荷率は上がっています。
彼らはこのような活動を通して、適切に確率を操作することで、成功することができたとも言えるでしょう。今後は7人のソロ活動が増えるとのことですが、これからの活躍にもARMY(BTSのファン名称)として大いに期待しています。
参考図書:『世界のエリートが学んでいるMBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた』/永井孝尚 (『確立思考の戦略論』抜粋)