おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2021年10月 1日 (金)
月刊きょうと/「映画鑑賞」(2021年10月)
今回は、メンバーのE.Tさんに「映画鑑賞」という題名でエッセイを執筆していただきました。
BUCに通い、人生の中で、夢中になれる趣味を持つことは大事なことだと感じるようになりました。しかし、私には大した趣味がありません。他のメンバーさんには、しっかりした趣味を持たれている方も結構いるようで、羨ましく思います。
趣味とまで言えるかわかりませんが、映画を観るのは好きでした。長らく映画鑑賞からは遠ざかっていたのですが、BUC通所を機に、マイペースに映画を観るようになりました。私が好んで観る映画は、一九四〇年代~五〇年代あたりの昔の映画です。私もまだ生まれていない時期です。最近の映画も観ますし、昔の方が絶対良かったとまでは思いませんが、昔の映画は、今ほど撮影・編集技術が進んでいなかったためか、登場人物の心理描写や人間関係を描くことに、より重点が置かれていたように思います。
BUCに通いだしてから観た映画の中で、『ローマの休日』があります。『ローマの休日』は古典の名作なので、観られた方も多いのではないでしょうか。私もかなり昔に観たことがあるのですが、久しぶりに観返してみました。以前観た映画を観返すのは、違った感じ方が発見でき、たのしいです。観たことがある人が多いだろうというのと、観たことがない人はぜひ観ていただきたいということから、あらすじは書きませんが、この映画はいろいろな教訓を与えてくれます。どんな人でも満たされない思いを抱えて生きているということ、変えられない現実があるほど人は満たされないものに対して切望し打ちひしがれること、それでもそれぞれに与えられた制約の中で人は希望を持って喜びを見つけることが出来ること。この映画の素晴らしい点は、こういったことを説教じみた感じではなく、笑いを交えながら軽く描いているところだと思います。
最近知ったことですが、『ローマの休日』のアン王女役には、当初、エリザベス・テイラーの起用が予定されていたそうです。エリザベス・テイラーのスケジュール調整が難航したことと、製作費が削減されていったことから、話が流れたそうですが、もし実現していたら、オードリー・ヘップバーンのよりも、より恋愛色の強い映画になっていたのではないかと想像しますし、それはそれで観てみたかった気もします。しかし、もし、この話が進んでいたら、オードリーは世に出ていなかったわけですから、偶然の産物に感謝したく思います。
あまり有名ではないですが、オードリー・ヘップバーンにとって重要な作品として『尼僧物語』という映画があります。『ローマの休日』とはまるで違い、重いテーマを扱った作品で、オードリーは敢えて抑制した演技で臨んでいます。幼いころの戦時中の辛い体験とオーバーラップする箇所もあり、オードリーにとっては、過去の自分と向き合い、乗り越える挑戦でもありました。この映画は、晩年の、ユニセフ親善大使としてアフリカの貧困地域を飛び回る活動につながったそうです。子供のころに観たきりなので、いつか観返してみたいと思っています。