おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2021年6月 1日 (火)
月刊きょうと/「私の愛犬」(2021年6月)
今回は、メンバーのソルトパワーさんに「私の愛犬」という題名でエッセイを執筆していただきました。愛犬のシェリちゃんとのエピソードを通して、感じたこと、気づいたことなどをまとめられています。ぜひ最後までご覧ください。
私は、うつ病歴が長いのですが、この間、私を支えてきてくれたのは、家族、本、愛犬です。今回はその中でも愛犬(トイプードル)の話をしたいと思います。愛犬との出会いは5年半前に遡ります。病気を発症して、なかなか良くならない私を妻が見かねて、「犬を飼ったら癒しになるし、お世話することで生活リズムが安定しそうだから、飼ってみても良いかも」と言い出したのがきっかけです。後日、ペットショップに行ったら、可愛いトイプードルを見つけたので私の膝の上に乗せてみたら、そこから離れようとしないので、「我が家に行きたいに違いない」と思い、買って帰りました。名前は長女が考えた「シェリ(フランス語で「愛されるもの」)に決まり、その日から家族の一員になりました。
それからも私の病気は一進一退を繰り返しますが、シェリは私の生活に明らかに変化を与えてくれました。それまでは調子が悪いとき、お昼まで寝ていることがありましたが、それが無くなりました。私が朝起きる時間になるとリビングにいるシェリが「まだ、起きてこないの?」と言わんばかりにリビング内を動き回る音が私の寝室にまで聞こえてきます。その音を聞いていると、体や気分がしんどくても「起きていこうか」という気になり、リビングに行くと喜んで尻尾を振りながら凄い勢いで私に飛びついてきます。そういうことを繰り返しているうちに朝起きることがそれほど苦ではなくなりました。
また、シェリを飼ってからは散歩を兼ねてウォーキングをするようになりました。すると、通りすがりの人がにこやかに声を掛けてくれるようになりました。年配の方が「可愛いですね」「女の子ですか」と話しかけてきたり、小さい子どもが「ワンワンだ!」と言いながら触りにきたり(たまに吠えて泣かせますが…)、明らかに近所の方との交流が増え、ウォーキングが楽しめる時間になりました。
そのシェリが今年1月、朝ご飯を食べた後に吐き戻しました。私はBUCを午前中休んで、車で動物病院に連れて行き、処置をしてもらいました。その後、シェリの体調は落ち着き、一件落着…と言いたいのですが、数日後、BUCのスタッフさんが私に近づいてきて、こう聞かれました。「BUCを休んでワンちゃんを病院に連れて行ったことを上司として考えたらどう思う?」。私はハッとしました。私がBUCを休む必要など無かったのです。私はその日の朝、疲れていてBUCに行きたくない気持ちがあったのです。しかし、そのことを自分自身で自覚せず(認めず)、シェリが吐いたことに託けて、BUCに行きたくない気持ちを無自覚に転嫁したのです。そして、以前にもこれに近いことが何度となくあったことに気がつきました。つまり、私は都合が悪くなると「病気だからしょうがない」というふうに病気を利用していたのです。それまでは、再発を繰り返す理由が分からなかったのですが、そう考えたら再発を繰り返すことに初めて納得がいきました。それに気付いてから、内面の奥深くにあるものと向き合えるようになり、幾つかの気付きを得ることができました。もし、シェリがいなければ私は内面の奥深くにあるものと向き合うことなく、復職していったかもしれません。
シェリが私に与えてくれた気付きの機会を無駄にすることなく、これからも自分と向き合い、行動変容を重ねていけば何とかなりそうな気がします。シェリ、ありがとう。そしてこれからもよろしく。