おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2021年5月 1日 (土)
月刊きょうと/「まっすぐな道」(2021年5月)
今回はメンバーのT.Sさんに、趣味(というよりもかなり本格的ですが)の作曲と、BUCでの復職トレーニングについて書いていただきました。一つの道が、実はいろんな道に通じているのかもしれませんね。
「私は音楽を聴いたり作ったりしていました。」
BUCで、週明けに休みの過ごし方を振り返るときの私の決まり文句です。偉そうに感じる方もいらっしゃるかと思いますが、実際、これしかやっていないんです。
作曲というのは、何か特殊な能力がなくても出来ますし、理論を学んだ人もそうでない人も作れます。特に曲の形がほぼ決まっているような、〇〇っぽい曲と言うのは比較的簡単に作れます。リズムに特徴のあるレゲェやボサノバとか、ドレミファソラシドのファとシの音を弾かないでメロディーを作ると、演歌っぽくなるとかが代表例でしょうか(ちなみにドを1番目とした時のファとシが4番目と7番目であることから「四七(よな)抜き」と呼ばれます)。
しかし、自分の中のオリジナリティーのある曲を作ろうと思うと、割と大変です。こういう曲にしたい、という完成形のイメージはあるものの、その頂きにどうやってたどり着くか。ここで経験や理論が生きてくることもありますが、結局木を切り倒して、下草を刈り、地面を踏み固めて道を作って、進んで行くしかないんだろうと思っています。私の曲作りは今そういう状態を抜け出そうとしているところです。病気悪化による中断などもありますが、1曲にずいぶん時間をかけている割に、未だに終わっていません。困ったものです。
BUCでの復職に向けたトレーニングは、作曲に似ているのではないかと思っています。自分の復職する姿をイメージして、それに向かっていくところがです。しかし、ひとつ作曲と違っていることがあると思っています。それは道です。
作曲では自分で道を作って行かなければならないことが多いのですが、BUCでの復職への道は、私はまっすぐな道だと思っています(実行委員は虎の穴だという話もありますが)。ただ、この道は割と厄介で、自分のその時の気分や体調によって、見え方が異なるみたいなのです。曲がって見えたり、坂道に見えたり、霧で視界が悪かったり。進み方も歩けたり、走れたり、戻ってしまいそうになったり。しかし、道はまっすぐだろうと思っています。なぜそう思うかと言えば、BUCはメンバーのみなさんになるべく早く復職して欲しいからです。不必要な道は作らないだろうと。
ここで、その道案内役になるのが、スタッフのみなさんだと思います。進み方を相談できたり、次の目標を立てるのに頼りになる存在です。希望して都合がつけば面談も可能ですし、道から外れそうになったらフォローしてくれます。スタッフさんにとっては自分たちで作った道。すみずみまでご存知だと思います。多分、ミゾ落としもお手のものでしょう。
BUCから復職への道がまっすぐに見えてくればこっちのもの。後は進むだけです。見えなければ体調を整えて休まず通所し、プログラムをこなして、まっすぐ見えるようにする。地道に見えるようですが、これがホントの「近道」なんだと思います。