おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2021年4月 1日 (木)
月刊きょうと/「一年前のあなたへ」(2021年4月)
今回はメンバーの「べきべき星人さん」が、「一年前のあなたへ」というテーマで、バックアップセンター・きょうと(BUC)での体験について書いてくださいました。
BUCへ通所しだし、もう一年となります。はじめは復職や社会復帰などまったく考えられない状態でしたが、今では大きく変わりました。
あなたのもっとも大きな変化とは、「気づきと受容」です。
あなた自身の特性として、認知の歪み(特に「べき思考」)があります。「うまくできなければならない」「失敗してはならない」「迷惑をかけてはならない」「真面目にやらなければならない」「○○とは~~であるべきだ」…です。
実は、こういった認知の歪みが自分自身を苦しめていることには、なんとなく気づいていました。それらすべてを把握していたわけではありませんが、わかっていて目を背けていた部分があります。そして、認めたくなかった、という思いもありました。
それはなぜか。「これ(認知の歪み等)が自分を苦しめているのは確かだろう」「だがこれまで、こうやって生きてきたのだ」「これらは自分を守る鎧でもある」「これらを変えるとはすなわち捨てさることであり、そうなると自分が自分でなくなってしまう」…こんな思いが渦巻いていました。
「また社会復帰しなければならない」「そのためには今までの自分のままでいてはならない」「しかし変わるとなると今までの自分を否定することになってしまう」…わかりやすいくらい、認知の歪みを抱えたままその歪みを直そうとしていました。
しかし、徐々にそのことに「気づく」ことができました。そして、変わること―すなわち「自己理解」・「対応力」・「処世術」を身につけることは、決して今までの自分を否定することではないのだ、と「受容」することができました。
認知の歪み―これを鎧とします―が、休職に至る要因のひとつとなりました。しかしその鎧があったからこそ、今まで自分を守ることができました。そして、その鎧があったからこそ、身についた数々の長所・能力といったものもあったのです。
それらは決して、捨てる必要はありません。ただ自分はそういう人間なのだ、と気づくだけでよいのです。自分は妙に重い鎧を着ているのだ、ということを受け入れるだけでよいのです。
さいわい、この鎧は仕立て直しができます。これも気づきですね。今の自分に、これからの自分にもっともフィットするようにすればよいだけです。
ただ、それには時間がかかります。今この瞬間も、これらかも、常に忍耐強く向き合っていくものです。しかし、あなたならそれができると信じています。あなたならきっと大丈夫です。
最後に、世紀をまたぐ二つの大作からの格言を贈ります。今のあなたなら、その真意を鎧に添えられることでしょう。
*俺はいつも最短の近道を試みたが、『一番の近道は遠回りだった』『遠回りこそが俺の最短の道だった』
*『待て、しかして希望せよ』