おうばく通信
おうばく心理室コラム
2020年6月 5日 (金)
【おうばく心理室コラム/2020年6月】「マスク着用にあたって気を付けていること」
新型ウイルス禍は少しずつ落ち着きつつあるようですが、それでも第二波、第三波の広がりを抑えるため、私たち市民の一人ひとりに意識の継続が求められています。
その一つが「マスク着用」です。通常のマスクはご周知の通り、自分への感染を防ぐ意味合いよりもむしろ、もし自分がキャリア(潜在感染者)であった場合に感染を周囲に広げない意味合いのほうが大きいとされています。
それだけに大切な心がけであり、当法人においても職員のマスク着用を徹底し続けています。一時期不足していたマスクの供給も次第に追いついてきており、以前は週1枚しか使えない状況だったのが、現在は患者さんに接する職員は毎日1枚使える状況にまで改善してきています。
その一方で、マスク着用が長期化するデメリットも感じています。
まずは、夏季になって気温が上昇してきたことに伴う熱中症のリスクです。
ちゃんとしたデータが示されているわけではないのですが、私自身の実感として、鼻と口がマスクで覆われていると、呼吸による熱気が口元にこもるうえ、吸う空気が暖かくなり、空気の量も不十分になるように感じています(暑い日やジョギングをしているときなどはとくにそうで、のぼせそうになります)。また、マスクをしていると呼吸の湿気で喉の渇きを自覚しにくくなるうえ、そのままでは飲料水を飲めないので、水分摂取量が減りがちであることも悪影響をおよぼします。
冷房が効いているところであればそれほど心配はありませんが、暑い場所で過ごさざるを得ないときは、その状況で出来る工夫をしていただければと思います。
具体的には、周囲に人がいない状況であればマスクを取ってもいいと思いますし、人が少ない状況であれば通気性に優れたタイプのマスクにしてもいいと思います。それ以外にも、冷たいドリンクを意識して小まめに飲んだり(ストロータイプの水筒ならマスクの下からでも飲むことができます)、携行型の冷却アイテムをうまく活用したりといった工夫が有効かもしれません。
また、マスクを着用していると話しづらかったり、相手の声を聞きづらかったりするので、自ずとあまり会話をしなくなることが懸念されます。
私たちは「話す」ことでストレスを発散している側面があるので、話す機会が減少すると、それだけストレスを内にためこみやすくなります。感染対策の観点からすると、公共スペースでの会話はできるだけ控えるべきなのですが、そのぶん意識して、家族との会話を増やしたり、友人と電話やオンラインでの会話を楽しんだりしていただければと思います。
さらに私たちには、表情によって気分が左右される側面もあります。笑顔を作ると気持ちが幾ぶんか元気になったり、逆にうつむき加減で過ごしていると気持ちもだんだん沈んできたりするわけです。そこでマスクを常時着用していると、喋る機会だけでなく表情を作る機会が少なくなり、ずっと無表情で過ごすことになったり、それによって長期的には表情筋の退化を引き起こしたりする結果、気分の停滞を招く可能性があります。
カウンセリングの場では、来談者の方もカウンセラー側もマスクを着用しているため、お互いに表情を読み取りにくいことがデメリットのひとつだと感じています。もちろん、会話の内容や声のトーンからほとんどの事柄は理解できるのですが、表情にはそれを深めたり、補ったり、彩ったり……といった種々の働きがあることを、改めて実感します。
感染防止の観点から必要な対応ですので、マスク着用は当面のあいだ続けることになりますが、以上の点から、マスクを付けて話すときはできるだけ身振り手振りを併用しながら、マスクの下では表情をしっかりと作って、少し大きめの声でメリハリをつけて話すよう心がけています。
マスクなど付けなくてもいい世の中に早く戻ることを祈るばかりですが、もうしばらくの間はマスクとも上手く付き合っていく必要がありそうです。
文責:臨床心理士・名倉