おうばく通信
おうばく心理室コラム
2018年11月 5日 (月)
【おうばく心理室コラム/2018年11月】「本屋に行くとお通じを催すのはナゼ??」
少々ビロウな話題で恐縮ですが、本屋に行くとお通じを催すという人が結構いるようで、どうしてこんな現象が起こるのかについての考察も、さまざまな視点からなされているようです。
「これって心理学的にはどうなの?」と訊かれることが時折あるのですが、私自身は本屋に足を運んでもそのようになる経験が全くなくて、正直なところよく分かりません(笑)。でもせっかくなので、自分なりに考察してみたいと思います。
筆者が耳にしたことがあるのは、本屋特有の匂い(もしくはインクの化学成分)が便意を誘発するとする説です。ただ、これがもし正しいなら、製本業界や印刷業界の人たちは常に便意との戦いを強いられているはずで、そういう話をとくに聞かないのは「匂い(もしくはインク)説」と矛盾があるように感じていました。
生理学的に見て便意を催しやすいのは、適度な運動をしたときと、リラックス状態にあるときです。身体を動かすことで腸の蠕動運動も活性化しますし、リラックスすることで副交感神経が優位となり排便が促されやすくなります(激しい運動は心身の緊張を高めて逆効果となる可能性があります)。
こう考えると、まず「本屋まで行く」のが軽い運動になり、その後「本屋で過ごす」時間が本好きにとっては楽しく、リラックスした状態をもたらすのかもしれません。
したがって、本屋は便意が催されやすい前提条件としては整っていると思われますが、運動要因とリラックス要因だけであれば、ハイキングなどにも同等の効果があるはずです。しかし、ハイキングに行くと便意が~といった話はとくに聞かないので、これだけでは説得力が不足しているように感じます。
心理学的に見ると、便意と書籍とのあいだに条件付けが形成されている可能性も指摘されます。本屋に行くと便意を催すと言う知人の一人が、トイレで読書する習慣を持っていたことから、この仮説に思い至りました。
要は「パブロフの犬」と同じ理屈です。エサを与えられると同時にベルを鳴らされる経験を繰り返した犬は、ベルを鳴らされただけでよだれを垂らすようになるのと同様、トイレで力みながら書籍を読む経験を繰り返した人は、書籍を見ただけで便意を催すようになるというわけです。
これには筆者も身に覚えがありまして。私はトイレに書籍は置いていないのですが、ベトナムを旅したときに買って帰った布製の鳥の人形を飾っています。そして気がつけば、「布製の鳥の人形」を見ると便意を催しやすい体質になっている自分がいました。以降、便秘気味のときはトイレに籠って、この鳥の人形を凝視しています(笑)。
そんなわけで、本屋に行くと便意が催されるのは「軽い運動」と「リラックス状態」、「条件付け」の3つが合わさった結果ではないかと個人的には推察していますが、どうでしょうか。
これが正解かどうかは分かりませんが、便秘にお悩みのかたにとって改善のヒントがあるようにも思います。まずは、トリガーとなる刺激(書籍でも人形でもなんでもOK)をトイレに置いて、便意とのあいだに条件付けを形成します。そのうえで便秘気味なときには、軽い運動でリラックスしたうえで、このトリガーの置かれているトイレに籠ってみる……。
もちろん、便秘への対策には普段からの食生活なども重要ですが、追加して気軽に試せる対策として参考になれば幸いです。
文責:臨床心理士・名倉