おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2017年10月 1日 (日)
月刊きょうと/「明日へ踏み出す言葉のチカラ」(2017年10月)
今回はメンバーのP.Wさん(男性)に、印象に残る言葉と、そこから得られたチカラについて書いていただきました。
BUCに通う期間で良いことの一つは、働いているときに比べ、趣味に費やす時間が比較的多く取れるところです。
私の場合は読書。BUCでの課題図書に加え、好きな作家の作品を改めて読み直し、感化されることが多かったように思います。
その中でも、自身も心の病を患いながら執筆活動を続けておられる多くの作家達の言葉に励まされました。
まずは『他力』や『生きるヒント』など、常に「人生」と向き合っておられる五木寛之氏の言葉から。
「鬱という漢字は元々は、草木の生い茂る様、物事の盛んな様子を表す字。つまり鬱というものを必ずしも悪いものでなく、一種の生命エネルギーが出口を見つけようとあがいている状態と考えています。」
「鬱であることは必ずしも避けるべきこと嫌なことではなく、人間の生きていくためや、心にとっては欠かせないもの。」
「ちゃんとしなる、ぐっと屈することのできる、鬱屈する心はなかなか折れない。だから、鬱の気持ちを抱くこと自体をちゃんと肯定することが大切。こんな時代、人間的だからこそ憂鬱な気分になるんだと。」
「鬱を感じる人は、生命力がありエネルギーがあって優しい人間的な心の持ち主だと、私は思います。」
「ゆえに、鬱の文化、鬱に生きる思想が当然あって然るべきだ。」
そしてリリー・フランキー氏の彼らしい言葉。
「鬱は大人の嗜み」
「鬱は中年の思春期」
旅と釣りを心から愛する冒険家・開高健氏からの言葉。
「成熟するためには遠回りをしなければならない。」
「無駄を恐れてはいけないし、無駄を軽蔑してはいけない。何が無駄で何が無駄でないかはわからないんだから。」
「臆病はしばしば性急や軽躁と手を携えるものだが、賢明は耐えること―耐え抜くことを知っている。」
女性作家からは荻野アンナさんの言葉。
「“起こったことはみんないい事”にする習慣を実践しています。日々起こる困った事でめげそうになったところで、“絶対、これは良いこと!良いこと!”と自己暗示をかけちゃうんです。」
続いて山本文緒さん。
「いい時もあった、と思い出すのはとても大切。そして、周囲に『助けて!』と言えることもとても大切。」
「小説が書けなくても私は無価値ではない。そのことに気付けた意味はとても大きい。」
そして、最後に心理学者の小倉千加子さんからの言葉。
「幸か不幸かうつ病になってしまった人は、自分が弱い人間などと悲観する事はない。また新しい人生の、新しい価値を見つけるチャンスなのだと認めよう。人間には、自分で自分の心の声を傾聴する使命がある。人生は何度でも軌道修正できる。うつ病はそのことに気づく重要なきっかけを与えてくれる。人間は心の病でも身体の病でも、必ず治癒力が備わっているものなのだから。」
これらの言葉は、病と闘う私たちへのメッセージ。
「大丈夫、病は必ず克服できる」という勇気を貰えた気がしています。
不安な心を支えてくれる、後押ししてくれる言葉に出会える読書は、人生を豊かにしてくれる素敵な趣味だと思います。
皆さん、自分にとって心に響く、素敵な言葉に出会える読書という旅に出かけませんか。