おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2017年5月 1日 (月)
月刊きょうと/「チェロと自分」(2017年5月)
今回はロールパンナさんに、チェロを通じての気づきについて書いていただきました。
私がチェロを始めたのは大学生の時でした。本当はもっと前から弦楽器(特にチェロ)をやりたい! と思っていたのですが、中学・高校にはそのような部活がなく、弦楽器をする機会がなかったのでした。やっとのことで大学生となり、ようやく交響楽団に入団してチェロをさせていただく機会に恵まれたのでした。
チェロを選んだ理由は、バイオリンよりも表に出ず、それでいて程よくソロもあるところなどなど…ですが、よりふさわしい理由は、なんとなく惹かれたからです。好き嫌いは言葉で表現できません。
無事にチェロをできる環境が整ったのですが、そこには小さな壁がありました。それは、私が人見知りであるということです。私には小・中・高共通の友人がいてくれたため、それまでは偶然にも人間関係にあまり不安なく学校生活を送ることができていました。誰も知り合いがいない中、交響楽団という大きなコミュニティに所属するのってどうなのかな? …しかし、チェロへのモチベーションを優先させ、また周囲の環境にも恵まれ、無事に今の自分の傍にはチェロがいてくれています。
そんな中、チェロ自体の難しさはもちろんのこと、何より周囲と協調して美しい音楽をつくる(例えば、ソロの時は前に出て音を主張し、そうでないときは控えつつもふさわしい音量や音色で演奏する)にはどうしたらよいか?といった経験をさせていただきました。主張するときは、周囲に配慮しつつもはっきりと…これは、アサーション? …そう、これってコミュニケーションの問題と似ているところがありませんか?(BUCの皆さんにはぴんと来てもらえると思います)
楽器の演奏には、その人の性格やポリシーなどが現れやすいです。私は普段のコミュニケーションでも自分に自信がなく、消極的になりやすいです。演奏でも自分の音に自信がなく、周りの音程や音色から浮いていないか気にしつつ、周囲の音に隠れようとしてしまいます。
私は当時、個人レッスンにも通っておりました。いつものように音出ししていたところ、先生から「君はなんか絵の中で弾いているみたいやねん…」と言われてしまいました。この言葉の本意は分からないですが、「自己主張が足りていない」というニュアンスだったと理解しています。皆さんは、演奏家を見ていると、情感豊かな表情やダイナミックな体動、音量のメリハリ、音色の豊かさなどなど…に圧倒されたご経験はないでしょうか? それらは奏者の上手い下手とはまた異なるものです。私は自分の音程が外れてないか怖い…そんな思いから自己表現(音)を後回しにしがちだったのでした。
私はいま、BUCでコミュニケーションの方法について学ばせていただいています。このような場をいただいてもなお、意見を主張したり周囲と協調性を図ることは難しく思っています。まだまだ実践を重ねている段階です。そのような段階でも、今の自分がチェロを弾いたら、少しは以前と違う演奏ができるだろうか…ふと思います。BUCを卒業しても、コミュニケーションの場面は続いていきます。そのような中で、チェロと自分の関係も少しづつ変えられていけばよいなと考えています。
拙い文章で恐縮ですが、最後まで読んでいただいた方、どうもありがとうございました。