おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2017年1月 1日 (日)
月刊きょうと/「作ってくれてありがとう」(2017年1月)
今回は利用者の人間っていいなさん(男性)に、BUCのプログラムの一つである「クラフト」について書いていただきました。
私からはBUCのプログラムの一つである「クラフト」についてご紹介させていただきます。
私はおよそ9ヶ月間クラフト係を務めさせていただきましたが、その長きに渡る時間のなかで、クラフトの楽しさや仲間との交流、係としてのやりがいを感じることがたくさんありました。
クラフトはステージ1の方を対象にした、集中力や知的作業能力を高めるためのプログラムです。「ペーパークラフト」を作成される方が多く、動物や花から建築物などの大作まで思いおもいに作成されています。その他にも、幼稚園の壁に飾ってあるような「壁面」や「指編み」をされる方もいらっしゃいました。
クラフトは例えば猫などの同じ動物を作っても、作者によって動物の表情や印象が変わります。太っていたり痩せていたり、男の子っぽかったり女の子らしかったりします。とても個性が出ていて味わい深いんですよね。
そして、クラフトの醍醐味は何といっても、作品を完成させたときの「達成感」を味わうことです。ピサの斜塔やサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂などの大作になると、完成するまで1~2ヶ月かかるので、その分完成した時の充実感や達成感はひとしおです。しかし、作品が大作過ぎると途中で嫌になってきます。あまりにも細かい切り取り線にイライラしたり、なかなか進まない作業に投げ出したくなります。そんなときは、他のクラフトメンバーを巻き込んで合同作成が始まります。
1人では作るのは大変でも仲間と一緒ならがんばれます。そんな「仲間と協力して一つのものを作り上げる」姿勢もクラフトの醍醐味の一つです。 しかし、この人海戦術により作業スピードは格段に上がるのですが、またしても問題が発生します。それは、「切り取ったパーツがどこの部品が分からなくなる」ことです。勢いに乗ってサクサクカットしていると、似たり寄ったりな部品だらけになります。まさに、プラモデルの部品を最初に全部切り取ってしまうようなものですよね。全然分かりません。こうなるとパズルゲームのように部品を探しまわるのですが、ここでお約束なのが、「○○の部品がない!なくなった!間違えて捨てたんかな?」という話になることです。そんなときは、「もうその辺の似たような部品を適当に付けたらいいんちゃう?」とか「ペーパークラフトでもこんなに作るのが大変だったら、絶対本物の現場でも“部品がなくなった”とか“違う部品を間違えてくっ付けたりしてるよ!”」という発言が飛び交います。
こんな微笑ましい雑談もクラフトならではで心安らぐ瞬間です。このような温かいメンバーに支えられたからこそ、クラフト係として頑張ることができたのだと感じます。
クラフト係をするなかで企画を考えたり、いろいろな葛藤や思い悩むこともありましたが、一番うれしく喜びを感じることは、通所メンバーの回復を目に見て実感できることです。クラフト係が参加のお誘いをさせてもらうのですが、通所間もない最初のころは体調が悪そうな方でも、クラフトを卒業される頃には、もっと笑顔で元気になっているように見えます。そんな姿を見ていると「クラフト係で良かったな」と実感します。ひな鳥の巣立ちを見守る母鳥の心境ですね。
そんな私もこの文章を書いている今はクラフトを卒業しました。寂しさはありますが、これからはBUCの本棚に飾ってあるたくさんのクラフトたちと同じように、陰ながら暖かくクラフトを見守っていこうと思います。みんな! それにクラフトたちありがとう!