おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2016年11月 1日 (火)
月刊きょうと/「初めての山登り」(2016年11月)
今回は利用者のNの2乗さん(男性)に、山登りの魅力についてご紹介いただきました。
私が当時23歳の頃、会社の先輩であるTさんとFさんと出会い、私との歳の差がTさんは20歳離れていて43歳、Fさんは10歳離れていて33歳と、かなり歳は離れていたのですが、いつも3人で仲良く、バス釣りに行ったりしていました。
それから1年ぐらい経って、私が会社の部署異動がしたいと悩んでいるとき、上司がなかなか配置転換をしてくれなくて、落ち込んでいました。それを見ていたTさんとFさんが見かねて、「一度、山登りにでも行かへんか?」と誘ってくれました。その時は、あまり気が乗らず断ろうと思っていましたが、TさんとFさんがしつこく誘ってくるので、「山登りをしたことがないので、いろいろと教えてくださいね」と渋々ですが、行くことに決めました。
それから、山登りをするためにTさんと一緒に、服装やリュック、靴などを選んでもらい買いました。徐々にですが、気分も“早く行きたい”という気持ちが湧いてきました。
そして、10月10日に行く日も決まり、Tさんが山小屋に泊まる手配と電車、バスの切符の手配もしてくれました。行くのは、長野県の涸沢となりました。私は、初めての山登りと、初めての行く場所で期待と不安でいっぱいでした。
当日、京都駅から長野県の松本駅まで電車で行き、それから、上高地行きのバスに乗り込み、どんどんテンションも上がっていきました。やっと上高地に到着し、少し休憩した後、上高地を散策し、私は今までに見たこともない、とてもきれいな川(梓川)や幻想的な池(明神池)を目の当たりにして、「日本にも、こんな綺麗な風景があるんやな!」とすごく感動しました。
そして、上高地をぬけて、とうとう涸沢へ登ることになり、気分は興奮状態だったので、疲れは感じませんでした。始めの方は、ちゃんとした山岳道で、気持ちはハイキング気分でした。
しかし、だんだん険しくなり、岩がゴロゴロとある所を歩き、傾斜も段々きつくなり、1~2時間ぐらい登り、見晴らしの良い場所で休憩をとりました。ゆっくりそこからの風景を見渡せば、山頂は雪で白く、中腹辺りではナナカマドなどの紅葉で赤く染まり、その下辺りでは緑の樹木におおわれていて、山のグラデーションがとても綺麗でその風景が目に焼き付いています。
その時、今まで会社の事で悩んでいる自分がちっぽけに思え、悩み事も吹き飛んでいきました。
休憩も終わり、山小屋に向かって歩き始めました。その途中、10月なのに雪が降ってきたので、びっくりしながらも感動していました。もう何もかもが初体験で、感動しっぱなしで今でもその頃の情景が浮かんできます。
そして、山小屋に無事に着き、ほっこりしました。その後、TさんとFさんと夕食(カレーライス)を食べ、疲れていたせいか狭いざこね部屋でも、気持ち良く眠れました。
翌朝、山頂まで行くには装備が不十分で登れなかったのは残念ですが、気持ちを入れ替えてゆっくり下山し途中でFさんが持ってきていた、虎屋のスティック羊羹を3人で分けて食べ、疲れていたせいかその時のスティック羊羹の美味しさは今でも忘れていません。そして、上高地に着き京都へと帰路に就きました。
この登山は、私にとってすごく人生で大切な良い経験となり、一生の宝物になりました。本当にTさんとFさんに誘ってもらわなかったら、今の私はなかったと思います。本当に感謝しています。
皆さんも、大切な人と素敵な風景や自然と触れ合って見て下さいね。自然と心が癒されます。