おうばく通信
おうばく心理室コラム
2015年1月 5日 (月)
【おうばく心理室コラム/2015年1月】運動音痴としての存在意義を存分に発揮できたスポーツプログラム
筆者が週1日出向している「バックアップセンターきょうと」のスポーツプログラムに先月参加してきました。
「バックアップセンターきょうと」(おもに復職をサポートするデイケア)と、「リカバリーセンターきらり」(おもに就労をサポートするデイケア)との交流を主たる目的としたイベントです。いずれのデイケアも当法人の施設でありながら、前者は京都駅前、後者は宇治おうばく病院内と地理的にも離れていて普段あまり接点がないため、体力の向上もかねて時折こうやってスポーツ交流の機会を設けています。
競技種目の選定など含めたプログラム作成や当日の司会進行といった作業はデイケア通所者の皆さんが担当していて、こういった作業を通じて企画力や統率力を育んでいただくことも目的であったりします。
ちなみに今回は、両デイケアに通所されている皆さんをシャッフルして赤チーム、白チーム、黄チームの3つ(各12人ずつ)に分けたうえで、「真剣リレー」「チャレンジリレー」「ソフトバレー」の3種目で得点を競いました。
「真剣リレー」は文字通り、ひたすら真剣に短距離を走って順位を競います。スポーツ経験者の方々は目を見張るような速さで駆け抜けていかれますし、スポーツの心得があまりない方々やお年を召した方々は無理のないペースで参加されます。勝ち負けに拘泥することなくおおらかな気持ちでスポーツを楽しまれる皆さんの姿は、我々スタッフにとってもこうありたいものだと感じる素敵な光景です。
「チャレンジリレー」は、各出場者が引いたカードの指示にしたがって、さまざまなチャレンジを伴いながら走ります。動物のゼスチャーをしたり、マリリン・モンローの女装をしたり、サンタクロースの着ぐるみをかぶったり……。とりわけ男性参加者がマリリン・モンローの姿で疾走するさまはシュールで、観衆一同の爆笑を誘う名シーンでしたねえ。
ちなみに筆者もこのリレーに参加して無理のない範囲で走らせてもらったのですが、私が走る姿を見た参加者のある方から「名倉さん、走るの速いじゃないですか! 思ってたよりもずっと速かったですよ!」との言葉を頂いて、嬉しいような微妙なような、なんとも複雑な心境でした。
このような感じで、勝ち負けよりも交流を楽しむ和気あいあいとした雰囲気のなか競技はつつがなく競技は進行していたのですが、最後の種目「ソフトバレー」を行う段になってちょっとした問題が発生しました。諸事情で参加できなくなった人が出て、各チーム1名ずつ人数が足りなくなったのです。
そこで白羽の矢が立ったのが我々スタッフでした。その場にはK看護師、S看護師、そして私の3人がいたので、1人ずつ赤チーム、白チーム、黄チームのいずれかに加わればちょうど丸く人数がおさまります。
で、どのスタッフがどのチームに加わるかという話になったとき、参加者でもあり実行委員でもある通所者のかたから意見が出ました。
「現時点で各チーム間の得点差がかなり付いているので、その点を考慮しましょう。最も得点の低い黄チームには、運動神経がよさそうなK看護師さんに入っていただく。皆さんこれでいいですか?」
もちろん満場一致です。実行委員さんはさらに続けます。
「次いで得点の低い白チームには、背の高いS看護師さんに入っていただくってことでどうでしょう?」
こちらも満場一致で決まり、残るはひとつ。
「では最も得点の高い赤チームには……」
このとき実行委員さんの表情が一瞬「ハッ」となったように感じたのは私の思い過ごしかもしれませんが、続けておっしゃいました。
「赤チームって私のチームですし、私、名倉さん好きですから、赤チームに入っていただいていいですか?」
もちろん快諾させていただきました。自分の運動音痴がチーム間のパワーバランスを取るのに役立ってヨカッタと、負け惜しみが全然ないとは言いませんが結構本当に思った一件です。
このときの実行委員さんの気苦労をおもんばかると、なんだか気を遣っていただいて申し訳なかったなあと改めて思います。咄嗟の「私、名倉さん好きですから」という理由も、よく考えると唐突さ満点ですが(笑)、そういう気遣いそのものがとても嬉しかったりするものです。
懸念されたソフトバレーもなんとか無事終えることができました。筆者のサーブに関して、ある参加者のかたは「貴重なものを見れてよかったです!」と言ってくださり、また別の参加者のかたは、筆者のサーブがかろうじて相手コートに入るたびに「ナイスサーブッ!」と鼓舞してくださり、皆さんのやさしいお気遣いが身に染みるひとときでした。
最終結果は、上述のような経緯がありながも赤チームが優勝しました。赤チームの皆さんは大健闘されたと思いますし、白チームの皆さんも黄チームの皆さんも含めて、勝ち負けにこだわらず楽しみながら交流されたことが何よりよかったと感じています。
またこのような場に参加させていただける機会を心より楽しみにしています。
文責:臨床心理士・名倉