おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2014年12月 1日 (月)
月刊きょうと/「魅惑のイージーリスニング」(2014年12月)
今回は利用者の天現寺広尾さん(男性)に、イージーリスニング音楽について書いていただきました。
読書や家事の時、どんな音楽を聴いていますか。 外出先のカフェで流れていて落ち着くのはどんな曲でしょうか。 J・POPや欧米のもの、クラシックやジャズなど、それぞれお好みがあろうかと思います。私は定番のジャズはもちろん好きですが、同じくらい好きなのがイージーリスニングです。
今ではクラシック以外で歌声の入っていない曲をすべてイージーリスニングと呼んでいるようで、最近は小編成の弦楽器やピアノなど、静かな感じのものが主流になっているようですが、1970年代から80年代にかけては、もっと大編成のオーケストラで演奏するものが沢山あり、美しい音色がラジオや街角でよく流れていました。 その代表的なものがポール・モーリア、フランク・プゥルセル、レイモン・ルフェーブル、クレイダーマン、ビリー・ヴォーン、パーシー・フェイスといったところでしょうか。どれもいいのですが、私が特に心ひかれたのは、英国のジョニー・ピアソンです。
ジェット・ストリームというFMの深夜番組はイージーリスニングの長寿番組ですが、以前は同じ名前・内容のプログラムがJALの国内線のオーディオサービスに入っていました。 ある年の秋、所用が重なり半月程の間に何度も飛行機で往来したことがあり、用事を済ませた帰りにジェット・ストリームを聴くとくつろげて疲れが癒されるので、JALに乗り同じ番組を何度も聴いたものです。 どんより曇って誘導路灯が鮮やかに点灯した午後遅くの羽田を離陸し、機首を北に千歳へ向かって上昇し、雲海を抜けて青空へ出ると、左の窓から午後の日差しがさっと差し込み機内が急に明るくなり、右の窓からは、自分が乗っている機体の影が雲海の上を丸く虹に囲まれてついてくるのが見えます。 こんな光景を眺めながら城達也の落ち着いた美声のナレーションで音楽を聞いていると、無機質なイメージの飛行機の旅にも旅情はあると気付きました。
この番組にジョニー・ピアソンが何曲か入っていて、繰り返し聴いてすっかりなじんでとても気に入り、これがきっかけでファンになったのです。ピアソンはキング・オブ・エレガント・ピアノと呼ばれたピアニスト・作曲家で、オーケストラを結成し、自らがピアノを奏で、オーケストラのサウンドと融合した幾多の名曲を世に出し、今でもベスト盤が出ています。 ところが、このときなじんだ曲の中で「秋風の妖精」だけは、ネットで検索しても、この曲に触れたブログを書いてる人はいても音源は見つからないのです。 諦めきれず何とかもう一度聴きたいと、ある土曜の夜ユーチューブでピアソンをすべてチェックしてみたら、この曲をピアノで弾いている人の画像を見つけ、英語の原題もわかりました。原題をさらに調べると、英国の獣医が書いた自伝的小説(邦訳=ヘリオット先生奮戦記)で、1970年代にベストセラーになり、BBCでドラマ化され、その主題曲をピアソンが作ったものと判明しました。 昔ならとても分らなかったろうな、ネットの威力と実感しますが、我ながらよく見つけたとも思います。
今ではBUC(バックアップセンターきょうと)のデスクワークや昼食時に、メンバーにもその魅力に触れて欲しいと、ピアソンを始めとするイージーリスニングの曲を時折流しています。皆さんお気付きでしたか。