おうばく通信
おうばく心理室コラム
2014年2月 5日 (水)
【おうばく心理室コラム/2014年2月】心理テストは当たる? それとも当たらない!?
心理テストの結果を患者さんにお伝えすると、こんな反応をいただくことがあります。
「すごく当たってます!」
「とくに、このへんとかその通りです! よく分かるもんですね~」
そして何とも複雑な気持ちになるのです。当たってると言って喜んでいただけるのは嬉しくもある反面、心理テストは占いや当てものじゃないからなァ…と、いささか歯がゆい思いも抱くからです。
当たっているというのはつまるところ、「患者さんのセルフイメージ」と「心理テストの結果」とが近いことを意味しています。たとえば、「自分の性格って、人見知りで、他者からの評価を気にしすぎて、傷つくのを怖がるところがあるな」と感じている患者さんが、心理テストを受けて「あなたは他者からの評価に過敏で繊細なため、自分を守ろうとし過ぎてしまう傾向があります」みたいな結果を返されると、その通りです!! と膝を打っていただけるという次第です。
日本人の大半は自分のことを、他者からの評価に過敏な人間だと認識している、というデータもあるので、ほんとうは膝を打つも何もないんですが、それはさておき。
心理テストの結果をお伝えすることの意義は本来、自己覚知を広げ深めてもらう点にあります。すでに自覚しているご自身の特徴を再確認していただくのも大切ですが、それだけではなく、それまで自覚していなかったご自身の特徴を認識していただくことこそが、ほんとうの意味での自己理解の深化につながるのです。
心理学のトピックスのひとつに「ジョハリの窓」というのがあります(下図参照;『心理学辞典 CD-ROM版』(有斐閣)より抜粋)。
自分が知っていて他者も知っている「自分」=開放領域
自分が知っていて他者は知らない「自分」=隠蔽領域
自分は知らなくて他者は知っている「自分」=盲点領域
自分も他者も知らない「自分」=未知領域
このような4つの領域に自己を分類したうえで、開放領域を広げていくことが自己理解や対人関係の進展にとって重要であるとされます。そしてそのためには、積極的に自己開示をしたり、相手からの指摘を受けたりする中で、隠蔽領域や盲点領域を小さくしていく必要がある、というのがジョハリの窓の概要です。
こう考えると、自分で自分を分析するだけでなく、隠している部分を相手に開示してみることや、それに対する相手からの反応や指摘に耳を傾けてみることが大切だと言えそうです。そして心理テストの結果も、開放領域を広げるためのひとつのツールとして、少しでもお役に立てればと考えています。
ちなみにジョハリの窓という一風変わった名称は、ジョセフ・ルフトとハリー・インガムという心理学者が提唱した概念なので、この2人の名前をとってジョハリの窓と名づけられました。横山やすしと西川きよしを併せて「やすきよ」と呼ぶような風習は欧米にもあったのか…と、ちっとも本筋ではないところにささやかな感銘を受けた個人的な思い出があるんですが、心底どうでもいいので本稿に書くのは自粛しておくことにします。
文責:臨床心理士・名倉