おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2013年2月 1日 (金)
月刊きょうと/「琵琶湖を眺めながら」(2013年2月)
今回は利用者の雲谷斎さん(男性)に、琵琶湖の現状について書いていただきました。
私は生まれも育ちも生粋の大阪人です。大阪で大学を卒業後、就職のために滋賀県大津に住み、その後転職して今は京都で職に就いています。
今は水道の水も高度浄水処理システムによって、ほとんど匂いが気にならなくなりましたが、少し前までは滋賀、京都、大阪と順に水の臭さが増していくのがよく分かりました。
ちょっと考えれば、琵琶湖・淀川水系で取水→浄水→使用→下水処理→放流を繰り返しているわけで、下流の大阪の人が飲んでいる水の中身は…と考えるとちょっと嫌になります。
琵琶湖では私が小学生の頃に初めて釣りをした覚えがあります。伯父に連れられ浜大津あたりで釣り糸をたれました。当時はまだ外来魚のブルーギルやブラックバスなどはおらず名前がよく分からない小魚や時には鮒なんかもかかったようです。しかし、その頃の日本は超高度成長期・列島改造の時代です。岸壁から足元の湖面を見ると何とも形容しがたい色の工場排水と思われる汚水が琵琶湖に流れ込んでいました。
そんな思い出に頭をめぐらせながら今の琵琶湖を考えてみました。
私が知る限り今琵琶湖に流れ込む川の水は案外きれいです。一部には工場排水も流していますが、かなり高度処理されたものです。しかし、泳いでいる魚は様変わりしています。
私の釣り人としての感覚では、泳いでいる魚の95%ぐらいは外来魚のブルーギルで数%が外来魚のブラックバス、残りの数%が在来種であろうと思います。
そんな中でもこの在来種というものは意外にしぶとく生き残っています。私がここ数年間に釣った(釣ったのを見た)魚をご紹介します。
毎年春先になると鮎(小鮎)の群れが接岸します。琵琶湖で普通に釣れて、しかも食べられる代表的な魚です。漁師さんたちもこれを捕まえて全国に出荷し、その鮎は各地の川で放流され大きくなって、夏には全国の食卓に並ぶ訳です。
その他に、なまず、おおなまず、ハス、ハヤ(小魚の総称)、ふな、にごい、こい、なんと鰻までが琵琶湖の南湖にいます。魚だけでなく海老などは時間と場所さえ知っていれば網ですくえます。びっくりしたのが、鳥のカイツブリやカワウまで釣ったことがあります。
一見汚いように見えて、近畿の水瓶になっている琵琶湖。
外来魚ばかり泳いでいるように見えて、しっかり在来種も生き残っている琵琶湖。
海のように大きく、時には荒れ狂う表情も見せながら、他方で海ではあり得ない鏡のように静まり返ることがある湖面。
何だか不思議な水溜りです。
私は根っからの滋賀県民ではないのですが、酒宴の最後には「琵琶湖周航の歌」を合唱したり、琵琶湖一斉清掃の日には皆が総出で取り組んでいる滋賀県民の姿を見ると、妙に感心させられています。
そんなに有り難くもないですが、一応きれいなので琵琶湖から望む初日の出の写真を掲載しておきます。
今年一年、皆さんにとって良い年でありますように!