おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2012年9月 1日 (土)
月刊きょうと/「植物とのお付き合い」(2012年9月)
今回は利用者のY・Kさん(男性)に、園芸の魅力について書いていただきました。
突然ですが、ご自宅で人間以外の家族がおられる方はいますか?
犬や猫に愛を注がれる方も多いでしょう。少し変わっているかもしれませんが、私は植物に対して同様の感情を持っています。
世話をしなければ枯れ、手を掛ければ立派に育つ。かなり寡黙であること以外は、ほかの生物と然程違いは無いと思います。
植物は口に出して自分の欲求を表現しない為、何を必要としているか察するのは難しいですが、上手く育った時はその結果に対して、育てた自分を褒め、自信を得ることができます。成長も緩やかな為、落ち着きや癒しを得ることもでき、ストレスの解消にもなります。
植え方や仕立て方ひとつで創造的な表現ができ、他の人から見ても評価の対象となります。
もしかすると冠婚葬祭などで、昔から花を用いることが多いのは、人が本能的に求めているからかもしれません。とても面白い存在だと思います。
自然界の植物と異なり、人間界に属する植物の命は人間の手中にあるため、生かすも殺すも育てるあなた次第となります。ここに他の生物にあまり見られない絶対的依存があります。
他の生物の幼い個体であればこのようなことはありますが、成体でこのような状態は余りありません。植物はあなただけが頼りであり、命を委ねてくれています。
こんな健気で物静かな存在がどこか愛おしく、保護欲をかきたてられます。そして、物静かではありますが、我慢強く、逞しく、学ぶことも多いと言えるでしょう。
植物には一般的に知られていないことが多くあり、例えば人間同様悲鳴を上げるということです。
植物を熱湯に浸けた瞬間に、ある電子機器で計測すると死に対する反応が悲鳴のような形で現れるという研究結果があります。
残酷な気がしますが、人間にはわからない所で植物はいろいろと感じていることの証明だと言えるでしょう。もしかすると人間同様喜びを感じることもあるかもしれません。このように考えると、接し方も変わってくるのではないでしょうか。こんな植物たちを育ててみませんか?
ここで私がお勧めしたいのは洋蘭の栽培です。カトレア属、シンビジューム属、デンドロビューム属、パフィオペディラム属、ファレノプシス属といった五大属に代表されるものから、あまりにマニアックで世間にほとんど出回らないものまで様々な種類があります。
世界中に分布し、どれも個性的な花を咲かせ、様々な環境で生きています。このような洋蘭は育てることが難しく高価なイメージがありますが、実際には比較的丈夫で安価なものが多いです。
非常にバラエティー豊かで、華やか且つ個性的です。育てることにより芽生える愛着はひとしおです。何年もかけて育てることができ、まさに家族のような存在となること間違いなしです。
美しい花で癒され、長期間身近に置くことでストレスを解消し、株が増えることに喜びを感じ、マニアックな蘭仲間が増え、世代の壁を超えた交友関係ができる。かなり良いことが多いです(経験談)。
「園芸療法として行う」というような硬いことは申し上げません。是非、神秘的な植物を家族として迎えいれていただき、様々なメリットを実感していただきたいと思います。
人は人に助けられ、立ち直ることができますが、人は蘭をはじめとする植物たちに助けられ、立ち直ることもできると私は信じています。私がそうであったように。