おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2012年5月 1日 (火)
月刊きょうと/異文化交流のススメ(2012年5月)
今回は利用者のM・Sさん(女性)に、異文化交流のノウハウについて書いていただきました。
異文化…というと、異なる国や人種の持つ文化とイメージされる方が多いかと。
が、今回私がお話させていただくのはある意味、も~っと身近な異文化とのコミュニケーション。オタク男子との付き合い方を、実体験を通してレポートしたいと思います。
現パートナー(オタク属性:漫画、アニメ、特撮ヒーロー、ゲーム)はずばり、私のお付き合い歴でも初めてのオタクさん。
今でこそ「萌え」がグローバルに通用する社会となっていますが、当時約10年前はオタク世界って割と漫画好きな私にも未知の領域。成年男性が美少女キャラに「萌え~萌え~」と叫ぶ姿に戦慄してました。そんな周りの友人たちと比べると、「一般人」に見えた彼でしたが、付き合ってみると色んなカルチャーショックが…。
エピソード①「オタクはデートでおごらない」
噂には聞いていた話でしたが、実際に割り勘でした。
ただ、後から聞くと「割り勘主義って聞いてたから。おごったら怒ると思って」とのこと。いや、それは男友だちに対してだよーっと突っ込みましたが、聞かないと相手の考えはわからないものですね。
エピソード②「変身ベルト」
ふと真顔で「俺、今、道に変身ベルト落ちてたら、拾って変身するわ」と言う彼に、「そっかー、変身しちゃうか…」としか反応できなかった私。
後から(男性ってヒーロー願望あるものだし、少年の心を忘れないっていいってことかも)と考えてみて気を落ち着けたものです。あれ、これって、認知療法っぽい?
エピソード③「ロリコン疑惑」
アニメキャラって大概10歳代前半ですよね。そこから出た疑惑。
きっかけは、アダルトコンテンツは二次元(アニメ)と三次元(実写)どちらが良いなど、他愛もない会話だったのですが、ちょっとした誤解発生。そのため再会時に小児ポルノは犯罪の温床で、女性をいかに傷つけるのかなど、私から涙を浮かべつつ説かれ、自分にかけられた疑惑に衝撃を覚えるはめになった彼。後に友人のオタクカップルたちと一緒に色々と解説をしてくれました。
曰く、マスコミ報道などからオタクは現実と虚構が区別できてないように思われがちだけれど、そんなことはない。アニメの中のキャラが良いと思うのは、見ている間は自分も(キャラーと同じ)10代の気持ちになっているから。実際の小中学生に恋愛感情はおぼえない。もし本当の小児愛者ならそもそも年上の私とは付き合わないというか、付き合えないもんだよ、と。おぉ、納得。その他、性におけるファンタジー性など、人間行動学か心理学の討論のように有意義な時間でした。
エピソード④「属性萌え」
私が自分の不甲斐なさに落ち込んで、「こんな私のどこが好きなの?」と聞いた時のこと。彼はさらりと「言ってることとやってることが違う所」など、一般的に短所と思うような所ばかりを列挙。
そう、オタクさんたちは例えばへまばかりする人を「ドジッ子」などと呼んで愛でたりするのですね。失敗が怖くて動けない私からすると、そんな人間受け入れられるなんて考えられない、と衝撃体験でもありました。
さて、振り返って思うのですが、よくわからないところがある相手と思っているからこそ、素直にどうしてそうするのか色々と聞いていたように思います。でも、本当は知ってるつもりの人だって、知らない所はあるもので。小さな異文化交流は至る所で繰り広げられているのです。