おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2010年12月28日 (火)
月刊きょうと「めくるめく『テツ』の世界」(2011年1月)
今回は利用者のKiriさん(男性)に、鉄道の魅力について書いていただきました。
さて、ストレスというものに対して、色々学んでいると、「コーピング」というキーワードが出てこないだろうか? 一言で言えば「悪いストレスに苛まれた時に気分を切り替える術」という事になるのだが、音楽を聴いたり、スポーツをしたり、瞑想や自己暗示をかけたり…と方法は様々ある。
数ある「コーピング術」の一つに、私の場合は「鉄道旅行」というものが存在する。そう、私は世間で言うところの「鉄ちゃん」なのだ。
ひとくちに「鉄ちゃん」と言っても、色々細分できて、鉄道写真を撮る「撮り鉄」や、鉄道全線踏破を目指そうかという「乗り鉄」、鉄道模型を愛する「模型鉄」、変わったところでは、路線や列車の廃止のセレモニーを見届ける「葬式鉄」などなど…。
じゃあ、私はどれになるかという話だが、あえて分けるなら「乗り鉄」という事になろう。ただし、ストイックな「乗り鉄」では無い。凄い人は始発から終電まで乗り続けて何処まで行けるか、場合によっては社中泊も辞さない、といった方々もいる。しかし、私の場合はあくまでもお日様が出ている時間帯が基本。やっぱり「旅」なので、名所も見たければ、ご当地グルメも堪能したいですよね。それ以上に、私は列車に揺られながら、のんびりと車窓を愉しむことを目的としているのである。暗くなったら車窓は愉しめませんからね。
というわけで、私が実際に訪ねた車窓のベスト3を紹介しよう。
その1:伯備線・米子(鳥取県米子市)~生山(鳥取県日南町)
冬季限定になってしまうのだが、この区間では中国地方の名峰・大山を眺めながらの車窓が続く。また、日野川という河川沿いの車窓も続く。なお、伯備線は米子と岡山を結ぶ路線だが、途中には蒜山高原や備中高梁といった観光名所も多数存在する。
その2:予土線・江川崎(高知県四万十市)~窪川(高知県四万十町)
言わずと知れた、日本最後の清流・四万十川のダイナミックな風景が楽しめる路線である。右に左にと四万十川の渓谷美が堪能できる。ちなみに、予土線というのは、愛媛県の宇和島から高知県の窪川に抜ける路線で、江川崎はその中間地点。なので、一見すると、江川崎側が四万十川の上流で、窪川側が下流かと思ってしまうのだが、実は逆。海から近い窪川付近の山中に源流があり、一旦内陸に流れてから、江川崎付近でUターンして太平洋に注ぐ川なのである。
その3:紀勢本線・周参見(和歌山県すさみ町)~熊野市(三重県熊野市)
紀伊半島のほぼ南半分だが、穏やかな海岸線から、入り組んだリアス式海岸、様々な奇岩など、とにかく太平洋の車窓を堪能できる区間である。細かい説明は不要。行けば分かります。
番外編:予讃線・伊予長浜(愛媛県大洲市)~高野川(愛媛県伊予市)
実際に訪れた時には、濃霧で全く車窓が楽しめなかったのですが…。路線が瀬戸内海の本当にすぐそばを走っていて、美しい瀬戸の海が堪能できるとか。特にこの区間で見る夕焼けは本当に心が洗われる様な景色だそうです。
色々紹介してきましたが、なんと言っても、物思いに耽りながら、「車窓」が楽しめるというのが、飛行機やマイカーには無い、鉄道旅行の魅力なんじゃないかと思っています。
…しかし、紹介した車窓は、全部「水」絡みですな。ひょっとしたら「鉄道」が好きなんじゃなくて、単に水辺の風景が好きってことなのかもしれません。好きなドライブコースも「宇治川ライン」と水絡みですし。