おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2009年5月 1日 (金)
月刊きょうと/you'll never walk alone (2009年5月)
今回は利用者のT・Hさん(男性)に、サッカーサポーターの魅力について書いていただきました。
2005年5月25日、イスタンブールにあるトルコ最大のサッカースタジアム、アタテュルク・オリンピヤット・スタディの観客席は赤一色に包まれていた。
もはや、オリンピックを凌ぐ、世界一のスポーツイベントと呼ばれているワールドカップ以上にハイレベルで重要な大会といわれる、UEFAチャンピオンズリーグ2004-2005シーズンの決勝戦は、トルコの国のカラーである赤と、決勝に駒を進めたイタリアのACミランの赤、そして僕の愛するイングランドのリヴァプールFCの赤で埋め尽くされていた。
試合は前評判どおり好調のミランがキックオフ直後から実力差を見せ付ける。ミランが完全に試合を支配し、1分、39分、44分に得点を挙げ、サッカーとしては決定的なスコアである3-0で前半を折り返すこととなった。
後半、リヴァプールはシステムを変更し賭けに出る。するとミランはこの策に混乱し、54分、56分に1点ずつ返し、スコアは3-2となった。これで静かだったスタジアムを埋めたリヴァプール・サポーターも勢いを取り戻し、スタジアム中にサッカーの応援歌として世界で一番有名な、リヴァプールのサポーターソング「you’ll never walk alone」が響き渡る。リヴァプールはさらに攻勢を強め、迎えた60分、同点ゴールが決まる。わずか6分間で絶望と思われていた3点差を跳ね返したのであった。
同点となったこの後、お互いに決定期を外し合い、両チームとも得点を奪えずスコア3-3でPK戦を迎え、先行のミランが、3人失敗し、対するリヴァプールは順当に3人が決め、PK戦のスコア2-3でリヴァプールの勝利となり、5度目の欧州制覇となった。そして、この奇跡的なリヴァプールの大逆転劇は「イスタンブールの奇跡」として多くのサッカーファンの記憶に刻まれることとなった。
この後、サポーターに対して多くの賞賛の声が寄せられた。「ここまでチームとファンが一体化しているクラブは世界中探しても他にはない」(ヨハン・クライフ)「前半に0-3でリードされても歌い続けたリヴァプールファンは世界一のファン」(ディエゴ・マラドーナ)また、リヴァプールのサポーターは世界一サッカーを知るサポーターとしても知られている。僕はそんなリヴァプールFCのサポーターだ。いつの頃からそうだったのかはよく覚えていないが、「イスタンブールの奇跡」のときに確信した。僕自身はこんな素晴らしいサポーター達と同じぐらい、立派なサポーターではないかもしれないが、そんな賞賛を浴びるリヴァプールのサポーターの一員であることを誇りに思う。
そして、今シーズン6度目の欧州制覇を目指し、現在チャンピオンズリーグの準々決勝まで勝ち上がってきている。また、国内リーグのプレミアシップでも、奇跡的な追い上げを見せ首位のマンチェスターユナイテッドに勝ち点差1に迫ってきている(4月4日現在)。
どんな状況であろうと、我々リヴァプール・サポーターは最後まで諦めない。あのイスタンブールの夜のように勝利を信じ、チームを信じ、最後まで応援し続ける。そして歌い続ける「you’ll never walk alone」を。