おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2008年7月 1日 (火)
月刊きょうと/山への想い(2008年7月)
利用者の幸い人さん(30代・男性)に、山の魅力について書いていただきました。
僕は山が好きである。山との付き合いも長い。
父親が山小屋の診療所のアルバイトに、家族を連れて行っていたことから考えるとおそらく4~5才の頃からか。父親は大学時代、登山会であったこともあり、登山が好きだった。そのため、よくお供をしていた。そのお陰で、日本アルプスはだいたいといっていいほど登ってしまったように思う。
今回、巻頭文章の依頼がある前から行きたいと思っていた山があった。岐阜県、滋賀県にまたがる独立峰・伊吹山がそれである。
伊吹山は山容が良く、大学時代に東海道本線に乗る機会があったが、春の雪解けの季節に見るその爽やかな風景に感じ入ったものである。
そのため、今回はこの伊吹山に関連したお話をしてみたいと思う。
伊吹山は標高1,377mであり、近年では深田久弥の日本百名山に選ばれている。そして、ドライブウェイが九合目まで完備され、車を降り歩くこと約20分で頂上に立てる。比較的近づきやすい名峰の一つではないだろうか。また、かつては世界山岳気象観測史上1位の積雪(1927年2月14日、11.82m)を誇る豪雪の山でもあった。
余談ながら、大学時代にそれとも知らずに吹雪の中、登山仲間と挑戦する経験があった。腰まで雪につかりながら、必死にテントを張り、朝起きた時、「びっくり!」。雪でテントがつぶされそうになっていて、非常に怖かった記憶がある。けど、吹雪の翌朝は見事な晴天であり、そこで見渡した一面の雪景色は今でも忘れられない。 話はそれたが、歴史も古く、神話における大和武尊の時代からその存在を表している。麓には大和朝廷時代の不破の関跡、そして有名な関ヶ原古戦場などの歴史遺産が散在し、日本史の流れをじっと見続けてきた存在であろうと思う。
先日、原稿を書くにあたって、「ああ、やはりもう一度見ておきたい」という衝動に駆られた。そのため、BUC終了後に、愛車に乗って伊吹山に向かった次第である。 京都の伏見から京滋バイパス、名神高速を通り1時間で麓に到着、なんて簡単に考えて出発したところ、なんと新名神に迷い込み、右往左往。
夕陽の落ちる琵琶湖を撮れたら、さぞいい絵であろうなあ、という楽しい目論見も見事に外れ、到着は午後七時半であった。 見事な夕闇(笑)のなか、「本日は終了」とあげられたドライブウェイの入り口で、見回りを終えた管理人の方が声をかけてくれた。僕を見る表情は哀れげであり、せっかくの来訪のため、パンフレットをくださった上に、ドライブウェイ入口の撮影を希望したところ、一旦消灯した照明を再度全開にしてくださった。まったく、汗顔の至りである(とほほ…)。 しかし、入口付近でも山の冷気が十分に感じられ、非常にすがすがしい気分が味わえた。気持ちよかった。
折にふれて、山を含め自然に親しむことは非常に良いことだと思う。7月~8月は高山植物の季節であり、ぜひ、イビキフウロなど、色とりどりの花々に心奪われる瞬間を味わいに行かれてはどうであろう。むずかしい事は考えずに、ね!