おうばく通信
BUCきょうと機関誌『ばっくる』連載エッセイ
2020年1月 1日 (水)
月刊きょうと/「ストレッチと私」(2020年1月)
今回はメンバーの黒豆さん(女性)に、ストレッチの効用について書いていただきました。
私の日課の一つに、ストレッチがあります。夜、家事を全て片付けて、お風呂から上がり、さあ、あとは寝るだけ、という状態で、部屋の照明を薄暗くして全身をストレッチします。時間にして20~30分程度ですが、一日の中で最もリラックスする時間であり、できなかった日にはなんだかスッキリしないまま朝を迎えてしまいます。今回は、そんなストレッチと私の関係について少し書いてみたいと思います。
私は休職してからしばらく自宅療養が続いたためか、BUCに通いだした当初は、元気なころと比べるとかなり体力が落ちてしまっていました。最寄りの駅まで歩くだけで息切れして目の前が白くなったり、半日椅子に座っていただけでぐったりと疲れてしまったり。体力づくりをしようにも、いきなり激しい運動はできなかったため、とりあえずストレッチから始めることにしました。
そのころの私は、いくら気を付けているつもりでもすぐに体調を崩してしまってうまくコントロールできずに、自分の体なのに自分のものではないように感じていました。そして、そのことに苛立ちや無力感や情けなさを感じていました。自分の今の状態をあるがままに受け入れることが大切だと頭ではわかっているつもりでしたが、実際にはそう簡単には割り切れないものです。
そんな状態で毎日とりあえずストレッチを続けているうちに、同じストレッチのポーズでも、指先の形や顔の向きを少し変えるだけで、筋肉が伸びる部位や伸び方が微妙に変化していくことに気付きました。そのうち、「今伸ばしているところよりもう少しこっちを伸ばしたいから、手の向きはこうだな」というように、ある程度狙ったところを伸ばせるようになってきました。さらには「今日はこの辺が凝っているから伸ばすのはこの辺だな」というように、自分の体の不快感を軽減するためにはどういう動きをすればいいのかも何となくわかってくるようになりました。狙ったところを狙った通りにグーっと伸ばし、その部分から体全体に何とも言えない心地よさが広がっていったとき、大げさかもしれませんが、「私は今、自分の体を自分で動かし、コントロールしている」「これはまぎれもなく自分の体だ」という感覚が沸き上がってきました。
さらに、私はもともと体が柔らかい方ではあったのですが、毎日ストレッチを続けるうちに、開脚して胸が床につくまでになりました。何かにつけて休職前の元気だったころの自分と比べて「できなくなった」と思ってしまうことも多かったのですが、開脚という、仕事とは何の関係もないことではあっても、以前はできなかったことができるようになったという経験は少なからず自信になりました。
ストレッチをすることで体がほぐれたり、リラックスできたりといった一般的に言われている効果ももちろんありましたが、それ以上に、私にとっては自分の体を、そして自分そのものを取り戻すという重要な行為だったように思います。もちろん、病気自体は投薬治療や、BUCでの毎日の活動があってこその回復だったと思っていますが、私の場合はその回復の軌道とストレッチの効果がうまく重なったのだと思います。
今では体調も気分も随分安定しましたが、一日の疲れをリセットし、リラックスするための大切な時間です。そろそろ復職の時期も近づいてきましたが、復職した後もこの日課は続けていきたいと思っています。