理学療法・作業療法
ワンポイントアドバイス
2014年6月17日 (火)
廃用予防~臥位での運動
みなさんは「廃用症候群」という言葉はご存知でしょうか?
ケガや病気が原因で寝たままの状態が長期に渡って続く事で、さまざまな心身の機能低下が生じます。これらの機能低下をまとめて「廃用症候群」と呼びます。
安静のため一週間、動かない状態が続くと全身の筋力の約10~15%低下すると言われています。老化による筋力低下が30歳から80歳にかけて、約30~40%生じます。老化による筋力低下が重なる為、高齢者は特に廃用による寝たきりのリスクが高くなります。
廃用予防には定期的に運動を行うことで予防・改善を図ることが可能です。本来は身体を起こした状態でのトレーニングを行うことで、身体を支える筋肉に刺激が加わり、より効果的です。しかし、筋力低下が生じた状態では体を起こした状態を維持すことが困難になります。
今回は身体を起こすことが難しい方に対しても寝た状態でも行える、運動を紹介します。運動を行う際には下記の注意点を守り、無理のない範囲で行ってください。
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※筋トレ時の注意点
• 呼吸を止めない:息を止めると血圧が上昇し、余分な力が入る(数を数えると息を止めずに行える)。
• 動かす部分を意識:目的の筋肉を意識しながら行うことで、より多くの筋線維が働く。
• 運動はゆっくり:反動を使わないことで負荷をかける。
• 無理をしない:筋トレは必ずしも負荷をかければ良いものでもない。負荷が強すぎると目的の筋以外が強く働き(ごまかし運動)、訓練効果が低下する。
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◆背筋・臀筋トレーニング(両足・片足ブリッジ)
1.仰向けで膝を曲げる。
2.臀部と膝に力を入れお尻を持ち上げる。
3.ゆっくり臀部を下ろす。
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◆腹筋トレーニング
1.仰向けで両膝を曲げる。
2.腹部に手を置き、身体を前方に起こす。
3.ゆっくり身体を下ろす。
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◆大腿四頭筋トレーニング(SLR・パテラセッティング)
•SLR (Straight Leg Raising Test下肢伸展挙上)
1.仰向けで運動する方の反対の足は膝を曲げる。
2.運動する方の足の膝を伸ばしたまま、上に足をあげる。
3.ゆっくり足を下ろす。
•パテラセッティング
1.仰向けで運動する方の膝下にゴムボール(タオル・ペットボトルでも可)を入れます。
2.ゴムボール(タオル・ペットボトルでも可)を押しつぶすように力を入れます。
3.力を抜いて楽にします。
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◆大臀筋トレーニング
1.両膝を曲げて横向けに寝ます。
2.上方にある足をゆっくり開きます(お尻が後ろに下がらないように注意) 。
3.足をゆっくり下ろす。
◆中臀筋トレーニング
1.両膝を曲げて横向けに寝ます。
2.上方の膝を伸ばして、お尻の方に引きながら、上にあげます。
3.ゆっくり下ろします。
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◆内転筋トレーニング
1.仰向けで膝を曲げます。
2.膝の間にクッションを挟み、両膝で挟み込みます。
3.力を抜きます。 初めは、1つの動作に10回反復、1回の反復に6~9秒をかけて行い、慣れてきたら回数を増やしてみて下さい。
※注意 訓練を行うことで痛みがでることも考えられます。訓練を行い痛みが増すようであれば、訓練を中止し担当医に相談してください。
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作成者: 山田 寿彦(宇治おうばく病院・理学療法士)
協力者: 四方 公康(宇治おうばく病院・理学療法士)、竹山 和成(宇治おうばく病院・理学療法士)
参考文献 文献 1) リハビリテーション従事者研修会すぐに使える筋力訓練 http://www.chutan-rh.jp/PDF/bc-text2010-2.pdf 2) 市橋則明,浅井宏祐ほか:運動療法学疾~患別アプローチの理論と実践~. 文光堂,pp179-187,2009