理学療法・作業療法
ワンポイントアドバイス
2015年6月16日 (火)
誤嚥性予防~食事の姿勢(座位編)
1.はじめに~
みなさんは「誤嚥性肺炎」という言葉はご存知でしょうか?
食べ物や飲みものを飲み込む動作を「嚥下(えんげ)」といいます。この動作が上手く行えず食べ物や飲み物、痰や胃液などが誤って気管や気管支内に入ることを「誤嚥(ごえん)」といいます。誤嚥を起こす原因の一つとして食事の姿勢があります。
食事の姿勢は大きく分けると椅子に座った姿勢とベッドに寝た姿勢があります。今回は椅子に座った姿勢について注意するポイントを説明させてもらいます。
2.注意するポイント
椅子に座った写真が二つあります。写真Aが良くない姿勢、写真Bが良い姿勢の一例です。(本ページでは写真をクリックすると大きいサイズの画像が別ウインドウで表示されます)。
それぞれの姿勢のポイントについて以下の通りです
<写真A 良くない姿勢>
<写真B 良い姿勢>
※仙骨すわり(ずっこけ座り)
仙骨すわり(ずっこけ座り)になると、首の筋肉が張ってしまって、食べ物が飲み込みづらくなります。食事を皿から口元に運ぶ動作もしづらくなります。食事時間も長くなり、食べこぼしも増えます(写真C)。
<写真C 仙骨座り>
改善方法として、自分で直せる人は写真Dのように椅子の後ろに座るように声を掛ける。
自分で直せない人は椅子の後ろに座れるように介助者が対象者の身体を後ろに引いてください。
<写真D 改善方法>
※かかとを床につける
足を床に着けると、二つの良い効果があります。
1.下肢に刺激が入り、覚醒が促されます。
2.床に足がつくと、浮いているときに比べ、食べ物がしっかりとかめます。
<写真E>
改善方法として、座面が低く、足が曲がりすぎて窮屈な人は座面の高い椅子に変える又はクッションを使用するなどの調整をします。座面が高く、足が浮く人(写真E)には座面の低い椅子の変更又は足の接地面を高くする(写真F)などの調整をします。
<写真F>
※自然な前傾姿勢
嚥下をしやすい姿勢は、人により異なります。約5°くらいのわずかな前傾姿勢が適している人もいれば、身体を起こすことが難しい人もいます。その人にあった自然な姿勢とれるようにしてください。前傾になることで、足に体重がのるので座位姿勢が安定します。
<写真G>
改善方法として、お尻や足の位置を調整、身体の位置を調節しても姿勢が直らない人はリクライニングベッドや車いすで頭や体幹の支えが必要かもしれません。
<写真H>
簡単ですが、以上が椅子に座った姿勢で注意するポイントについてです。
次回は、ベッドに寝た姿勢で気を付けるポイントについて、説明したいと思います。
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作成者:山田 寿彦(宇治おうばく病院・理学療法士)
協力者:四方 公康(宇治おうばく病院・理学療法士)、一村 秀和(宇治おうばく病院・理学療法士)
参考文献:
1)一般社団法人日本呼吸器学会:http:www.jrs.or.jp/
2) 日本摂食嚥下リハビリテーション学会誌18(1):55–89,武原 格,山本弘子, 2014
3)12. 1. 食事姿勢のポイントⅠ(イスとテーブルの場合). 全国高齢者ケア研究会:http://izumidateruo.cocolog-nifty.com/blog/files/tekisuto12-1.pdf