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ドキュメント・ザ・舞台裏/作業療法室「OT-リボーン」のリアルな裏側をお見せします!(2019/08)
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作業療法室「OT-リボーン」のリアルな裏側をお見せします!
当院の舞台裏を潜入レポートする本企画。
今回は特集記事で紹介されたOT(作業療法)のリアルな現場をご紹介します。
それまでにも耳にしたことはあったけれど、なにしろ「作業」である。どんなことだって作業といえばそうだし、何を指しているのかよく分からない点で、「食パン」に似たような違和感を抱いていたのも事実だ。
そこで今回は、現役の作業療法士さんたちにお願いして、その実際を徹底的に見せていただくことにした。
フレッシュな森村さん、駒居さん、田中さん~お出迎え陶芸
約束の時間通り院内の作業療法室に伺うと、出迎えてくださったのは3名のフレッシュな作業療法士さん。
カメラを向けると、御三方それぞれの「映え」ポーズでフレームに収まってくださる。田中さんはサッと笑顔で、駒居さんはすかさずろくろ回しで、森村さんはろくろ台が無くてもエアろくろで対応される臨機応変っぷりだ。
せっかくなので陶芸から詳しく訊いてみることに。
どういう工程で作るんですか?
駒居「まずは土をこねて、ろくろ台の上で形を整えます。一週間くらい乾かしたら、それを800度程度で一日かけて素焼きします」
森村「素焼きが終わったら、次は上薬を塗って1200度程度で3日かけて本焼きします。上薬を塗ることでコーティングされ、水気の吸収を防ぐとともに、色付けの装飾にもなるんです」
上薬には種類がいろいろあって、それぞれ仕上がりの色合いが異なるという。置いてある完成品を見ると、確かにどれも色とりどりだ。
ちなみに、左端にある薄緑の長細い陶器はバナナケースですか?
森村「いえ、一輪挿しの花瓶です」
食い意地ばかり張って風情のないことでスミマセン……。
誰も知らない革細工
次に見せてもらったのは革細工。隣のデスクに移動すると御三方、陶芸家から革細工作家へと、瞬く間に早変わりされていた。
革細工の手順について教えてください。
駒居「まず田中さんがやっているように、革を切り抜いて模様を型押しします。それを液体染料で下塗りした後、ペースト染料を塗り込んで防水とツヤ出しを行うのが、いま森村さんがやっている作業です」
財布などはさらに、周囲を糸で縫ったり、周囲に開けた小さな穴に色吟レースと呼ばれる革紐を巻きつけたりして完成させていく。
ちなみに、作業療法と聞いてすぐ頭に浮かぶのが、この革細工である。どうして革細工なのだろう?
田中「誰も知らないから、です」
えっ、どういうことですか!?
田中「世間の多くの人たちにとって、革細工って一度も経験したことがなくって、それがリハビリの題材としてメリットなんです」
つまり、こういうことだ。脳障害などで機能が低下した人がリハビリに取り組むとき、病前からよくやっていた作業を題材にすると、どうしても当時の自分と比べてしまって、「できなくなっている自分」を意識して落ち込んでしまいやすい。
したがって、病前にやったことのない革細工のような作業を題材にしたほうが、当時の自分と比べることなく取り組みやすいメリットがあるというのだ。なるほどー。
森村「このような考え方は手芸にも取り入れています。ご案内しましょうか?」
手芸いろいろ
続いて案内された手芸コーナー、森村さんは塗り絵を実演してくださる。
絵を描く作業としては、白紙に自由に描くフリードローイングもあるけれど、絵を描き慣れていない人たちにとってこれは相当ハードルが高いので、まずは塗り絵から導入することが多いらしい。
かたや駒居さんは、なにやら刺しゅうのような作業にいそしんでらっしゃる。
今やっているのは何ですか?
駒居「これはネット手芸といって、プラスチック製のネットに飾り糸を通していくんです。通常の手芸に比べて失敗しにくいメリットがあります」
プラスチック製ネットの目に沿って糸を通していくと作品が完成するので、脳機能障害や思考障害があっても混乱せずに取り組みやすいんだとか。また、通常の手芸だと病前にやっていた人も多く、当時の自分と比べてしまって落ち込んでしまわれる懸念があるが、ネット手芸は病前にやっていた人がいないこともメリットだという。
かたわらでは田中さんが毛糸を相手にしておられた。
これは今を作っているんですか?
田中「ポンポン手芸です。毛糸をこうやってまとめてから切っていって、丸いぬいぐるみのようにしていきます」
どれもコロコロしていて、とてもかわいい。ちなみに革細工やポンポン手芸などの作品は、家族にプレゼントするために作る人も多いという。「誰かのために作る」ほうが脳機能の活性化とモチベーション向上につながるという研究報告があるといい、作業療法の効果は作業の要因だけでなく、対人関係の要因も大きく影響していることを実感させられる。
お仕事への思い
さいごに、このお仕事に就こうと思ったきっかけと、お仕事への思いについてうかがった。
田中「祖父が脳梗塞で入院したとき、作業療法に参加してるって聞いて興味を抱きました。それで勉強し始めて、実習でおうばく病院のお世話になって、こんなに作業の種類が多いことに魅力を感じて就職を決めたんです。患者さんが作業療法を通じて改善されて退院につながることが大きなやりがいになっています」
駒居「もともとリハビリに興味があって、当初は理学療法の分野しか知らなかったんですが、作業療法もあると知って、こういう関わりがリハビリになるんだ! と一層興味を持ちました。自分が担当した患者さんが喜んでくださったときはとても嬉しいです」
森村「祖母が入院したときにリハビリで作業療法をやっていて、これって何をやっているんだろうと関心を持ったのがきっかけで大学の進路に選びました。精神疾患へのリハビリで何ができるのか、さらに深く勉強していきたいです」
御三方とも入職してまだ1~2年目とのことながら、とてもしっかりしておられ、作業療法への熱意が伝わってくる取材だった。
これからも若い力で、患者さんのリハビリをさらに充実させていってください!!
(取材と原稿/臨床心理士・名倉)
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