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読まないで!?ドクターXの酔いどれ放言/「診療のデジタル化に脅威を感じる担当医」 (2018/06)
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「診療のデジタル化に脅威を感じる担当医」
〈終業後、京都市伏見区の居酒屋Fにて〉
そろそろ蒸し暑い季節になってきましたが、先生もちょっと汗ばんでおられますね。
「暑さだけじゃなくて、恐怖感からくる汗かもしれんわ(笑)」
また何かありそうですね。あ、注文はどうしましょう?
「たまには景気よく牛肉といきますか。牛肉のたたき!」
承知しました。ではたまには赤ワインといきますか。
〈2人で牛肉をつつきながら瞬く間に赤ワイン1本が空に〉
ちなみに先生がおっしゃっていた恐怖感って何なんですか? 思わせぶりで気になるんですけど。
「平たく言うと、医療のデジタル化ってことになるかなあ」
当院にも導入されている電子カルテですか? 先生ちゃんと使いこなしておられるようにお見受けしますが。
「電子カルテもそうやけど、はじめはレントゲンやCTといった画像系からデジタル化されてきたんよね」
少し前までレントゲンといえば白黒フィルムみたいな写真を読影板にかざしてはりましたよね。近年はパソコン画面上で見てらっしゃるようですが。
「当時は脳波や心電図もすべて紙媒体やったからタイヘンやったわ。続いてカルテが電子化されたときも、どんどん便利になるなあとデジタル化の恩恵を感じたねえ」
やはり便利ですか。
「カルテは基本的に公的な文書やから、手書き時代は鉛筆や修正液が使えなくて、書き損じるたびに二重線で修正してメンドウやったからねえ。その点、電子カルテは文字を打ち間違えても修正してから決定すればいいだけの話やし、定型文はコピー&ペーストも使えるし能率的ではあるね」
患者さんからは、先生がディスプレイばかり見ていて寂しいという声も聞きますが……。
「タイピングが苦手やと、キーボードや画面を見る時間のほうが多くなってしまうんかもしれんね。僕もパソコンは得意ではないけど、できるだけ患者さんと顔を合わせるよう意識はしてる」
だったら先生、医療のデジタル化にそれほど恐怖を感じるは必要ないのでは?
「いや、話はここからでね。電子カルテの次は、オンライン診療の波がすでに訪れつつある。さらにその先を考えると、今後どうなっていくんやろうって」
オンライン診療って一体なんですか?
「ネット回線のテレビ電話みたいなシステムを使った診療やね。一部のクリニックなどで運用が始まってる。患者さんはスマホとかを使って、モニター越しに医師の診察を受けるわけ。当院では導入していないけどね」
患者さんは自宅に居ながらにして、病院にいるドクターの診察を受けられるってことですか!?
「その通り。自宅に限らず、職場、旅先、海外でもね。もともとは医療が行き届かない離島や僻地のために始まったサービスなんやけど、それが拡大されて、仕事で受診の都合がつきにくい患者さんなどにも適応できるようになってきたわけ」
私が患者なら、病院に行かなくても診察を受けられるなら便利で助かりそうですが、先生としてはいかがですか?
「うーん、どうやろう。テレビ電話の映像と音声だけやと、たとえば患者さんの微妙な息づかいや切迫感などは読み取りづらいやろうし、においなんかも感じられないよね。お風呂入ってないなとか。五感をフルに使って診察している精神科医の立場からすると必要な情報がオンライン診療で得られるんやろうかという懸念は大いにあるね」
そうなっていくことに恐怖を感じてらっしゃるんですね。
「いや、オンライン診療にとどまるならまだよくて。この勢いでデジタル化が進むと、いずれAI(人工知能)による診療が主流になって、僕ら医者のほとんどはお払い箱になるかもしれない。実際一部のがんの画像診断などは、AIによる識別能力が専門医と同レベルに達したという報告もあるからね」
人の心を扱う精神科領域は、さすがにAIでは対応できないのではないでしょうか。
「膨大なデータから学習し続けるAIだけに、いずれ精神科でも正確な診断と治療を行うようになるかもしれないと半ば本気で思うよ。そうなったら僕ら医者も路頭に迷うんじゃないかって…」
この対談もAIドクターが相手になったら悲しいです。
「その頃には対談原稿もAIが書いてくれるだろうから、心配無用やと思うよ(笑)」
そうなったら私たちは、ただ飲んでるだけですね(笑)。
乾杯~!
(当院匿名精神科医X べるぶネオ編集部)
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