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読まないで!?ドクターXの酔いどれ放言/「仕事の意義について葛藤する担当医」 (2018/02)
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「仕事の意義について葛藤する担当医」
〈終業後、京都市伏見区の居酒屋Fにて〉
「自分の仕事の意義についてちょっと考えてしまってね……」
まあまあ、とりあえず注文しましょう。何になさいます?
「寒い時期はやっぱりおでんやな~。大根は入れてね。あと熱燗で」
承知しました。では、おでんと熱燗でいきましょう。
〈二人でおでんをつつきながら、「英勲」の熱燗が5本目に〉
ところで先生、仕事の意義って何を悩んでおられたんですか? お医者さんって人の役に立つ仕事の、最たるもののひとつじゃあないですか。
「担当患者さんの運転免許の更新に関する診断がここのところ続いていて、これって誰のために仕事してるんやろうって疑問にかられてね」
免許更新に診断が必要なんですか?
「てんかんや統合失調症、躁うつ病、重度の睡眠障害など一定の疾患に該当する人は、運転免許の更新時にその旨を申請する義務があって、その際、『症状はコントロールされているから運転しても大丈夫』という医師の診断書が必要になるんよ」
ちょっと厳しいようにも感じますが、以前からあった制度なんですか?
「一昔前まではもっと厳しくて、統合失調症やてんかんなどと診断されたら、それだけで運転免許が所持できない時代が続いてた。ちなみに当時は、そういった疾患と診断されたら僕らの医師免許も取得できないことがあった」
そうだったんですか。
「精神障害への差別をなくして精神障害者の社会参加を促していこうって気運のなかで、そういった制度が撤廃されたんやけど、その後、てんかんが疑われるドライバーが大事故を起こした事件の影響もあって再びチェックが厳しくなり、現在に至るってわけ」
だとしたら、患者さん本人や周りの人々を守るために必要なチェック機能のように思いますが……。
「そう単純な話じゃないんよ。僕たち医者も正直なところ、この患者さんは事故を起こしません! なんて確約はできないし、運転に影響しませんと断言できるクスリもないんよね。さらに言うなら、精神障害者による交通事故よりも、若者による交通事故のほうが確率的にずっと高いと思うよ。経験の浅い若者ほど、若気の至りで無謀な運転をしがちやからね。だからと言って、24歳以下のドライバーは免許更新時に医師の診断書を要する!とはならないよね。」
確かにそうですね。
「でも行政は、精神障害については医師にお墨付きを求めてくる。運転免許って行政が認可・発行するものなのに、その後の更新の可否については医者に丸投げっていう姿勢が、ちょっといかがなものかなァと。ただの愚痴になってしまうけど」
このコーナーは先生の愚痴がコンセプトですので(笑)。
「でも、こういったことが冒頭の、仕事の意義への疑問につながってくるんよ。そもそも僕が医者を志したのは、目の前の患者さんに寄り添って治療したいという思いからやのに、精神科医になって気がつけば、運転免許の更新可否とか、目の前の患者さんのためとは思えない業務に追われている現状。僕はいったい何を救ってるんやろう!? ってね」
現状がどうなっていくといいんでしょう?
「もちろん僕ら医者も、協力できる部分はしたいと思うよ。担当患者さんの継続的な病歴を把握しているのは主治医やからね。ただ「病気の有無」と「運転能力の有無」は本来別のものであって、病気の有無について判断するのは医者の仕事やけど、運転能力の有無については行政ももっと責任を持って判断に関与してほしいね。免許更新時にブレーキ反応速度など含めたテストをしっかり行うとか手はあるはずやけど、それが面倒なんやろうなあ……」
それでも精神科医の道を歩み続けてらっしゃるのは?
「内科や外科などの一般科ならこういう葛藤もないんやろうけど、僕はやっぱり精神科の人間くささが楽しいというか、自分と患者さんが連続線上にあって、患者さんの病気でない部分も含めて診れるのが好きなんかもしれんな」
そんな泥くさい先生に(笑)
今後も末永い精神科医業を願って、改めて乾杯!
(当院匿名精神科医X べるぶネオ編集部)
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