べるぶネオ
ドキュメント・ザ・舞台裏/「バックアップセンター・きょうと」を突撃レポート!(2018/02)
特集/リワークプログラム(2018/02) | ドキュメント・ザ・舞台裏(2018/02) |
読まないで!?ドクターXの酔いどれ放言(2018/02) | おそと ぶらり探訪(2018/02) |
「バックアップセンター・きょうと」のリアルな裏側をお見せします!
当病院の舞台裏を潜入レポートする本企画。
今回も特集記事とタイアップして、「バックアップセンター・きょうと」のリアルな現場をご紹介したいと思います。
バックアップセンター・きょうと(以下、と表記)は筆者も、十数年前の立ち上げ時から現在に至るまで、週1日の出向スタッフとして微力ながらお手伝いさせていただいている。
内情についてもある程度は知っているつもりだけれど、なにぶん週1日の勤務なので、知らないヒミツがまだまだあるかもしれない。
そんなわけで今回は、立ち上げ当初から専従スタッフとしてBUCを見守り続ける看護師・永田さんにお話をうかがいながら、特集記事には出てこないリアルな内情をお伝えしていきたい。
お出迎えの永田さんと水槽
BUCのドアをノックすると、「どうぞどうぞ」と笑顔の手招きで出迎えてくださった永田さん。
そのままセンターに足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが、存在感のある立派な水槽だ。数年前に登場して以来、きれいに手入れされていて、中の住民もドジョウにエビ、カージナルテトラ、タニシと充実し続けている。
この水槽って、どういう経緯で設置されたんでしたっけ?
「あるメンバーさん(※BUCでは利用者の皆さんをこのようにお呼びしている)がこの水槽を機材一式、寄贈してくださったんですよ」
趣味で水槽をやっているかたが、使っていないものがあるというので、BUCに寄付してくださったのだ。
その後の手入れというか、世話がタイヘンじゃないですか?
「そうなんですよ。この水槽が入る前は野外でメダカを飼ってたことがあるんですけど、水温が不安定だったせいか何匹も亡くならせてしまった過去があって……」
そのときはどなたが世話を?
「当時は私が担当してました。今の水槽は、寄贈されたメンバーさんが世話役も買って出てくださる形で始まったんです。それを生き物係のメンバーさん数名が引きついで、日々丁寧に世話しながら、現在にいたるまで順調に育ててくださっています」
水槽のメンテナンスに関してはスタッフよりもメンバーさんのほうが詳しいようで、果たしてこれがいいのか悪いのか(笑)。でも、スタッフが少々頼りないくらいのほうが、メンバーさんの自立心や潜在能力を引き出せるのかもしれません。
ところで、生き物係というのはどういうものですか?
「生き物係は植物や魚の世話を担う係です。BUCでは他にも名札係や情報発信係など、復職トレーニングの一環としてさまざまな係活動を導入してるんです」
情報発信係は私が担当スタッフなので知ってます!
「この水槽は、メンバーさん同士が魚たちを眺めながら世間話をされたりと、つかず離れずの交流の場にもなっているんですよ」
悠々自適に泳ぐ魚たちが適度なワンクッションとなって、私たちを癒してくれている。こういう空間そのものが治療的に作用しているように感じられる。
もう汚くない!本棚
BUCの中をさらに進むと、本棚スペースが場所を構えている。
結構たくさんの蔵書がありますけど、どれもスタッフが選んでいるんですか?
「課題図書としてメンバーさんに読んでもらう本はこちらで選んでいますが、それ以外はリクエストだったり寄付だったりします」
見れば、うつ病や復職に関する課題図書のほか、ダイエットや映画など幅広い書籍が並んでいる。
一冊一冊、透明なカバーを付けてらっしゃるんですね。
「当初はカバーを付けてなかったんですけど、次第に汚れが気になるようになってきて、このままでは大変なことになってしまう! との判断でカバーを付けることにしたんです」
重曹で本をパックしてみたり、黒ずんだ部分をヤスリで削ったりしてみたものの、ほとんど効果がなかった。そこでビニールの透明カバーを付けてみたところ、キレイに保たれることが判ったので、以降すべての本にカバーを付けているのだという。
汚れが付着するのは、それだけメンバーの皆さんが熱心に読書に励んでいる証拠でもあるけれど、その陰では苦労もあるようだ。
「この本棚も係活動のひとつとして、メンバーさんたちが整理や点検などくださってるんです。責任感を持ってきちんとマネジメントしてくださっていて、とても頼りになります」
BUCはスタッフの力だけでなく、さまざまな係活動を通じてメンバーさん達がいきいきと力を発揮してくださることで、一層活気ある場になっているのだと改めて感じさせられる。
ホールの不思議な座席配置
普段メンバーさんがデスクワークや作業に取り組むホールの座席を見わたすと、テーブルの配置がまちまちで、三角に向かい合っていたり、一人席になっていたりする。
どうしてこんな配置になってるんですか?
「これもメンバーさんからの提案です。通所し始めて間もないメンバーさんは人との距離が近いとしんどい場合があるという配慮からいろんなレイアウトで座席を配置してみることにしたんです」
その後さらに議論を重ねる中で、BUCでの環境をオフィスに近づけるための配置や、交流が自然と生まれやすい配置など、さまざまな意見がメンバーさんから出され、現在もレイアウトを試行錯誤中だという。
善いと思ったアイデアは積極的に提案されるメンバーさんの姿は、まさしく職場で活躍されているときのようだ。こういうプロセスもまた、復職への準備にどこかでつながっているのかもしれない。
謎のグッズはOB会のモノ
ふと物置棚に目をやると、パーティーグッズのような品々が雑然と積まれているのが気になった。
これらは何に使うんですか?
「OB交流会で使うための品です」
BUCを卒業して職場に復帰しているOBさんと、現役の通所メンバーさんとの交流の場として、毎年開催されるOB交流会。これらの品々はそのためのグッズなのだった。
それにしても、ずいぶん賑やかで楽しそうな品々ですね。
「いつもスタッフであることを忘れるくらい楽しいです(笑)。前回(2017年7月)は参加者が90名を超えました。OB交流会もメンバーさんのトレーニングの一環として、実行委員で企画・運営してくださっているんです」
OB交流会はさながら同窓会のような雰囲気だという。OBの皆さんはそれぞれ、復職したり転職したり、結婚されていたりと、さまざまなライフイベントとともに元気に過ごしておられ、「そういう姿を見るとスタッフとしても本当に嬉しく、元気をもらえます」と永田さん。
十年越しのお付き合いになるBUC開設当初のメンバーさんも来てくださって、「お互い歳をとりましたねえ(笑)」と昔を懐かしむ一幕もあるんだとか。
印象に残っている出来事はありますか?
「あまり言いたくないんですけど、BUC10周年のOB交流会の場で、失態を演じてしまったことを思い出しますね」
どんな失敗をされたんでしょう?
「OB交流会の場で、スタッフ数名がピンクレディー『UFO』のダンスを披露するという企画を私が立てて、担当スタッフは1ヶ月くらい前から練習に励んで舞台に臨んだんです。そして当日、参加者の皆さんも「スタッフが踊るなんて!」と大いに盛り上がりながら、パソコンの音声ファイルをクリックしてダンスがスタートしたんですけど……」
スタートしたけど、どうなったんですか?
「曲が始まってすぐ、私が音量を上げようとパソコンを操作したら、音声がビューンと早送りになって、本来なら3分以上ある曲が1分弱で終了しまったんです。みんな唖然とする中、皆さんからは拍手をいただいてしまい、もう一度やり直す雰囲気でもなくなって…。あの1ヶ月の特訓はなんだったのかと、ダンス担当のスタッフも茫然としてましたけど、今では笑い話のひとつにしてくれている寛容さに感謝です」
そのときのようすを想像するとクスッと笑いそうになるけれど、自分が当のダンス担当者だったら相当ガックシきていたに違いない。
ただ、こんな失敗談も楽しい(?)想い出話として紹介できるのは、BUCのスタッフ間の雰囲気が良いことの表れなのだろう。
お仕事への思い
さいごに、BUCでのお仕事について、思いを聞かせてください。
「通所中のメンバーさんの中には、まだつらい状態だったり、大変な時期だったりする人もいて、それを支える難しさを感じることは正直あります」
確かにそうですよね。
「でも、しんどい時期をともに過ごしたからこそ、元気になっていかれるようすを共有できる喜びや、卒業された後に元気な姿をお見かけしたりときの感激もひとしおなんです」
さらに、さまざまな社会経験を持つメンバーさんとのやりとりの中で、自分自身も大きな学びと成長を得られているという永田さん。
周りを明るくし、メンバーさんの力を引き出す名スタッフとして、これからも奮闘しながらBUCを盛り上げていってくださ~い。
(取材・原稿)臨床心理士・名倉
特集/リワークプログラム(2018/02) | ドキュメント・ザ・舞台裏(2018/02) |
読まないで!?ドクターXの酔いどれ放言(2018/02) | おそと ぶらり探訪(2018/02) |