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読まないで!?ドクターXの酔いどれ対談/「患者さんの退院に苦労する担当医のホンネ」(2016/6)
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終業後、京都市伏見区の居酒屋Fにて
先生が匿名でしこたま飲んで好き勝手話す本コーナー。一部で好評を博しているようで、「酔いどれの記事から読んでます!」という声を数名からいただきました!
「ホンマかいなァ~。僕がただ愚痴ってるだけの迷コーナーやと思うけどなァ」
本当なんですって。今回はひとつ祝い酒といきましょう。
「お祝いとなると、やっぱりタコかな。タコ刺しと……、今回はワインもらおかな。白で」
おぉ、いいですね白ワイン。ボトルで頼みましょう!
〈中略。40分ほどで白ワイン1本が空になり、2本目(赤ワイン)を追加注文〉
ピッチ早いですねえ。ストレスたまってらっしゃるとか!?
「どの先生もがんばったはるし、僕だけストレスたまってるなんてよう言えへんよ」
こんな患者さんは診たくない! とかあったりするんじゃないですか?
「それは無いな。どんな患者さんでも困ってはったら診て助けたいっていうのが本音やで。医者の性(さが)かもしれへんけど」
どんなケースでも大歓迎なんですか? 誘導するみたいで申し訳ないですけど、今日の先生、ちょっとカッコ付けてません?(笑)
「まァ正直、困るケースはあるよ。でもそれは患者さん本人の問題というより、家族さんとか地域の人たちとか周りの問題が多いかな」
といいますと?
「たとえば手の付けられへん混乱状態で入院してきた患者さんが、治療の甲斐もあってすっかり落ち着きを取り戻されて、じゃあそろそろ退院について話を進めましょうって話になるとするやん」
ええ、症状がおさまったら当然そうなりますね。
「しかし家族さんの中には、たとえ治っても家に帰ってこられると困るから、ずっと入院させといてください! と言って、受け入れを拒む人も時々いるんよ」
家族なのにひどいですねえ。
「いや、家族さんの気持ちも分かるんよ。混乱状態にある患者さんとの関わりでさんざん苦労してきてはるからね。ただ、患者さんを自分たちから離すことしか考えてもらえへんと、退院してどうするよ? ってことになってしまう」
そんなときはどうするんですか?
「退院を受け入れてもらうために、病気についてきちんと説明して、家族さんの不安を少しでも軽くするのがまず大事やな。あとは訪問看護とかの利用可能なサービスを紹介して、退院後の負担を軽減できることを分かってもらう」
それでも拒まれるときは?
「今夜は食い下がるなあ(笑)。 確かに拒み続けはる家族さんもいる。
そういうときは、グループホームとか一人暮らしとか含めて、自宅外への退院を選択肢にする場合もあるよ」
これは失礼しました。ちょっと飲みすぎたかもしれません。
「まァまァ、退院に苦慮するケースがあるのは事実やからね。受け入れを拒む家族さんもそうやけど、治療に対する期待が高すぎてゴールを共有できひん家族さんも難しい」
どういうことですか?
「僕ら医療者の立場からすると、入院中のゴールはとりあえず症状を落ち着かせることで、退院後にいろんな資源も利用しながら外来で治療を継続していくっていうビジョンなんやけど、家族さんによっては、入院中のゴールが発症前の元の状態に戻ることとか、普通の人間になることやったりするんや」
そういった家族さんのゴールには無理があると。
「一概には言えへんけど、完全に元の状態になって退院というのは難しいし、当面のあいだはストレスを減らして、薬の力も借りながら治療していく場合が多いからね」
普通の人間になるというのも無理ありそうですね(笑)。
「そうそう。普通ってなに? という雲をつかむような問題になる」
それに、何もかも普通という人がいたら、もはや普通じゃないですもんね。
「家族さん以外にも、地域の人たちが患者さんの退院を拒むケースとか苦労はいろいろあるんやけどね」
そういうケースを少なくしていくためには何が大切なんでしょう。
「僕個人としては、精神疾患に対する理解を深めるための教育を、子どもの頃からしていくことが必要やと思う。小中学校でそんな授業って受けた?」
いえ、受けてないです。
「そうやろ? でも子どものときから精神疾患についてある程度理解してもらうことは大切やと思うんや。そのためには僕らも積極的に講演活動とかしていかんとアカンのやけどね。ま、今日はこれでひと段落した感じやし、このへんにしとこか」
(取材・原稿)べるぶネオ編集部
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