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ドキュメント・ザ・舞台裏/リハビリ室のリアルな裏側お見せします!(2015/10)
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リハビリ室のリアルな裏側をお見せします!
当病院の舞台裏を潜入レポートする本企画。
今回はリハビリ室の中を密着取材しました。
この連載について最近気になっているのが「舞台裏」というコンセプトだ。院内のいろんな部署を取材しているものの、これでは「アナタの部署はマイナーな舞台裏ですよ!」と暗に言っているようなもので失礼にあたるのではないかと。
今回の取材はリハビリ室にお願いしたいと以前から考えていて、それは日頃どんな風にお仕事されているか今ひとつ分からなかったからなのだが、そういう意味ではリハビリ室に対して自分の中でマイナー感を抱いていたような気もするし……。
いや、そうじゃあない! これは先方に対して失礼なのではなく、筆者である私自身が諸事情に疎すぎて舞台裏のように感じてしまうのだ。ああ、このたわけ者、物知らずが!!
このように激しく自分を鼓舞しながら取材させていただいたリハビリ室。今回は理学療法士の四方さんと作業療法士の藤原さんのお二人が案内してくださいました。
リハビリ室のイロハから
はじめに四方さんから話をうかがう。
Q.リハビリ室って理学療法士と作業療法士で分業とかしてはるんですか?
「理学療法では、たとえば歩行・立ち上がりといった身体機能に焦点を当てたリハビリを行ってます。対して作業療法では、掃除や洗濯といった日常生活、さらにはその先にある趣味や生きがいまで視野に入れたリハビリを行ってるんです」
なるほど、理学療法で基礎的な身体機能を回復していただき、作業療法でより広い生活能力、ひいては生きる意味まで取り戻していただくというわけだ。
プラットホームで身体ほぐし
Q.具体的には、理学療法はどういう手順で進められるんですか?
「患者さんが入室されたらまず、プラットホームと呼ばれるこの台に横たわっていただき、身体をほぐしたりします」
家庭用ベッドのようなその台はなんだか丁度いい高さで、寝転ぶによし、座るによしという印象だ。
「隣に畳を敷いて、起き上がって座る練習をしたりもします」
そう言いながら畳の上で実演してくださる四方さん。そこはかと妖艶な雰囲気が漂うが、今回はそういう主旨の取材ではないのであえて指摘はしない。
歩行器を使って移動
こんな筆者の煩悩を感じ取ってか否か、四方さんはすぐさま立ち上がって次の説明へと移られた。 「足の不自由な患者さんの移動には、これら歩行器を使います」
患者さんの状態に応じて、最もポピュラーな一本杖から、安定性を増した四点杖、さらに両手が使える持上げ式、上体を器具に預けて車輪移動できる馬蹄式などがある。
どれも一長一短で、たとえば四点杖は安定するものの騒音が大きく階下に迷惑がかかるし、馬蹄式は車輪があるため一般家庭の中で使うのは無理があるという。
平行棒を使って移動
「次は平行棒です」
えっ、体操選手が宙返りとかするアレですか!? なんてハードなリハビリなんだ!!
「そういうのではなくて、棒を利用して歩行訓練や評価などを行うんです」
棒の幅が広く握りにくく作ってある方の台は、手の変形のある方や足を鍛えたい人に適している。一方、棒の幅が手すりサイズに作ってある台は握りやすく一般的なリハビリに適しているとのこと。
プーリーで上肢の可動域広げ
こういうのも使うんです、と実演してくださる四方さん。滑車がついた吊革みたいな輪がひたすら上下に動かされている。
「こういう動きをすることで肩やひじの可動域を大きくするんです」
他にも階段訓練などあるが、誌面の都合上、作業療法に進むことにしたい。
作業療法で編み物
ここからは作業療法士の藤原さんがバトンタッチである。
「作業療法は内容がとにかく幅広いんです」
患者さんが退院した後、できる限り自立・充実した日々を過ごせるようにとの視点から、個々人に応じてさまざまなリハビリを行うのだという。
Q.たとえばどんなことを行うんですか?
「編み物とかもしますよ」
失礼ながら藤原さん、あまり編み物をされるようにはお見受けしないですが…。
「普段は全然しないですよ(笑)。でもそれが逆に幸いすることもありまして」
Q.どういうことでしょう?
「これは今、ある女性患者さんと一緒に編んでるんですけど、編み物がすごく上手な方で僕のほうが教わっているんです。でもそれが逆に患者さんのやる気を引き出せている感じなんですよ」
左手で豆拾い
「こんなこともします。根気がいる作業です」
見れば藤原さん、利き手ではない左手に持った箸で豆を拾っては隣の皿に移しているではないか。
Q.何のためにそんな辛気くさいことを??
「左手で持っているのは、利き手交換訓練の意味があるんです」
脳梗塞などで右側が半身麻痺になってしまった患者さんの場合、食事も含めて多くの動作を左手で行わないといけなくなる。そのためのリハビリとして、こういう練習があるんだという。
「20分~30分くらいやっていただくんですけど、やってみると結構たいへんですよ」
調理実習タイム
退院後、主婦的な役割を担うことになる患者さんには、調理の練習に取り組んでいただくこともあるんだとか。
食材を切ったりフライパンを返したりの練習に勤しむ藤原さんの姿はとても板に付いていた。
園芸を愉しむ
患者さんと一緒に園芸もやっているとのことで、ベランダに案内してくださった。
「趣味で園芸をやっておられた方だと、退院後も続けてみようかなと思ってくださることがあるんです。園芸を通じて活動や感情が賦活されることも多いんですよ」
その他、着替えを行う練習や顔を洗う練習、囲碁や将棋など、さまざまなことを作業療法では行っているとおっしゃる藤原さん。
終わりに
日々こうやって仕事にあたっているお二人に訊いてみた。
Q.お仕事のうえでの必須アイテムってありますか?
四方さんは「訓練を拒否されていた患者さんがいつの間にかリハビリに励んでいるような和気あいあいとした空間ですね」、藤原さんは「関係づくりや緊張緩和のための笑いです」と、それぞれ答えてくださった。
そろそろ取材を終えようかと、ふとスタッフルームを見ると、棚の上にこんなダルマの姿が……。
Q.これ何ですか?
するとお二人とも苦笑いしながら、
「何十年も前からウチにあるらしく、『リハビリ室のヌシ』って言われてることだけは知ってるんですけど、謎ですねえ」
「処分しようかという話が一度出たんですけど、室長から、それはアカンと言われまして(笑)」
「巨大なカボチャから削り出したものだって話も聞きましたけど、それ以外は全然分かりません」
よく分からないけれども代々受け継がれ鎮座し続けている一体のダルマと、常に目的意識を持って業務に励んでいるスタッフの皆さん。
これからもめげない心と笑いをもって、患者さんのリハビリにあたっていただきたいと感じた取材体験である。
(取材・原稿)臨床心理士・名倉
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