おうばく通信
おうばく心理室コラム
2019年3月 5日 (火)
【おうばく心理室コラム/2019年3月】「今年も木津川マラソンに参加して感じたこと」
まったくの私事で恐縮ながら、先月(今年2月)初旬に行われた京都木津川マラソン大会に参加してきました。フルマラソンに参加するのは去年2月に行われた前回の同大会が初めてで、今回は1年ぶり2回目の参加となります。
前回のレポートに書いた通り、iPS研究所長の山中伸弥先生リスペクトの身としては、山中先生のタイムをどこかで追いかけている自分がありました。山中先生は数年前にフルマラソンでサブ4(4時間切り)を達成されたのち、現在はサブ3.5(3時間半切り)を達成しておられます。
自分も昨年になんとかサブ4を達成できたので、今年はサブ3.5に到達できれば……という思いを抱きながら、ここ半年ほどちょぼちょぼとジョギングを重ねてきたのでした。
ただ、我ながら学習能力が無いと申しましょうか。
昨年度は事前の練習量を増やしすぎたせいで足の腱を痛め、そのまま大会本番を迎えることになりました。そして今年度も、年末年始に追い込んで20km、30kmと立て続けに走ったら右臀部を痛め、またもや痛みを抱えたまま大会本番を迎えることになってしまいました。我ながら世話なしです。
コツコツ努力を重ねるのはわりと得意なほうだと自分では思っているのですが、能力の限界をわきまえず「過ぎたるは及ばざるがごとし」になってしまうところは自分の短所だと改めて痛感します。
大会本番でも走り始めて2~3kmで痛みが出てきて、それ以降はつらい時間が延々と続くことになりました。まさに自業自得です。それでも、おかげさまでなんとか完走でき、タイムは3時間27分。目標だったサブ3.5をギリギリながら達成できて、たいした結果ではありませんが、嬉しいようなホッとするような、ひとまず悔いのない形で大会を終えることができました。
マラソンの魅力とは何なのか? 人それぞれだとは思いますが、自分の場合は(日常→非日常の順に)、
・日々のジョギング習慣による爽快感と体調の向上
・ときどき遠出したり仲間と出かけたりするランの楽しさ(風景や食事も含めて)
・レースでのタイム達成
の3つに大別されます。
マラソン大会への参加は3つめの「レースでのタイム達成」がおもな目的で、今までコツコツとジョギングを積み重ねてきた成果がタイム短縮につながった! という達成感と自己効力感が最たる報酬です。努力が結果につながったとき大きな満足感を得られるよう、私たちはプログラムされているのでしょう。
ただ、こういった報酬ばかりに重点を置きすぎるとリスクも増えるように感じます。
たとえば私のマラソン場合、昨年は「サブ4」、今年は「サブ3.5」となると、来年はホップ・ステップ・ジャンプで「サブ3」(3時間切り=上級者の仲間入りとされる)が目標になりそうですが、自分のような平凡な市民ランナーにとってサブ3は非常に厳しい目標であり、その達成のためには生活全般をマラソン中心にシフトチェンジしなくてはならないでしょう。仕事が終わったら大急ぎでジャージに着替えてランニング、飲み会や趣味の誘いも断ってランニング、体重を落とすため日々の食事はダイエットメニューばかり……というような。
そもそも生活は、仕事にしても趣味にしても食事にしても、それ自体が「目的」だと思っています。しかし、それらがマラソンでサブ3を達成するための「手段」になってしまうのは、自分的にはちょっと違うかなァと感じるのです。
それに、あまりマラソンにばかり入れ込んでしまうと、足の故障などでそれが叶わなくなったとき、喪失感が大きすぎて気落ちしてしまいそうなのも心配です。それよりは日々、仕事も趣味も食事も楽しみながら、そのひとつとしてジョギングもたしなむ程度にとどめるのが、自分にとってはバランスのとれた生活であるように思います。
ひとつのことを追求して極めることが悪いと言うつもりは決してありませんし、実際に大成してらっしゃる人たちは資質の高さに加えて、妥協することなくひとつの物ごとに注力し続ける才能にも突出しているケースが多いことでしょう。
その一方で、結果ばかりを追うのではなく、それ自体を味わい楽しむ姿勢もまた大切だと感じます(こういう思いは歳を重ねるにつれて募ってきています)。私の場合はもともと運動音痴で身体も強くないので、マラソンもサブ3.5という若干座りの悪い中途半端なタイムでひとまず自己満足として、リスペクトする山中先生にはどんどんタイムを離されていくと思いますが、今後はタイムの向上よりも、自然のなかを走る気持ちよさや走り終えたあとの食事の美味しさなどに主眼をおきながら、長く楽しくランニングを続けられればと考えています。
このような考え方は、大成しない人の典型的なパターンであるような気もします。でも、大成を目指すだけが人生ではない! 中途半端には中途半端のよさがあるのだ!! と自分に豪語しつつ(そのくせ言ってる内容はポンコツですが。笑)、足るを知ることの大切さを改めて痛感している昨今です。そして、こういう気づきを得られることも、マラソンの魅力のひとつなのかもしれません。
文責:臨床心理士・名倉